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翳り - Descent - 2020/05/30更新
出典: UO公式ニュースレター
https://mailchi.mp/broadsword/uo-newsletter-49?e=9e1273cca7

By EM Malachi

「瞑想の邪魔をしないように。」バトリンは衛兵に言った。いつもの尊大な礼服と金のペンダントではなく、バトリンが身に着けていたのは毛織のローブだけだった。教祖である彼が鉄製の掛け金を持ち上げると、隠し扉は軋んだ音を立てて開いた。信者である衛兵の困惑を見て取り、バトリンは階段を降りながら声を掛けた。「強く立ち上がろうとする者は、一度は暗闇に落ちなければならない。」

衛兵は理解したように見えた。「かしこまりました。バトリン様。何人たりともここを通ることはできません。」

地下室はがらんとしており、布に包まれた物体が中央にあるだけだった。そこは、ブリタニアで一番清浄な地下室であり、虫やネズミのざわめきとも無縁であった。バトリンは腰を下ろすと深く息を吸い込んだ。そして、完璧な立方体のブラックロックを覆っていた布を取り除いた。蝋燭の灯りを消し、暗闇の中で待った。

「お前は失敗した」という言葉よりも先に、バトリンは冷たい怒りを感じた。言葉の主は既に痛みを感じているバトリンに言い訳を絞り出す余地すら与えなかった。立方体の魔法によって、暗闇から引き寄せられた記憶がバトリンの中で蘇った。

フェローシップの熱心な信者たちは、ブリタニアの下水道に慎重に爆発物を仕掛けた。この爆発によってブラックソーン城の地下はヘドロと汚水であふれることになった。既に瞑想によって洗脳されていたあまたの石工と大工たちは、城の地下にできた洞窟をきれいに掃除し、ソーサリア全土に「声」を広めるために必要なキューブジェネレーターを作った。一部の異端者がこの仕組みを破壊するまでは、フェローシップの影響力は拡大し続けた。しかし、このフェローシップの初代の産物は、ブリタニアの首都の奥深くで沈黙するモニュメントと化した。

バトリンは悲鳴を押し殺して拳を冷たい石の床に打ち付けた。「私はできるだけのことをした。王に可能な限り近づこうと試みたが、あまりに多くの疑念を抱かせすぎた。もし私が軍を与えてもらえるのなら、国の半分を奪うことができるだろう。」

「もうそれは実験済みだ。」暗闇はバトリンの中に光景を浮かび上がらせた。

ブリタニアはペイガン率いる四元素の力によって侵略された。しかしそれは図らずもタイタンの思い描いたような虐殺にはならなかった。ヒューマンとガーゴイルには準備ができていた。ストラトスが銀の嘘を紡ごうとも味方を得ることはなく、ハイドロスは水路の街ベスパーすら水没させることができなかった。パイロスは訓練されたドラゴンの群れに引き裂かれ、ミノックの戦士たちは鉄槌によってリソスの醜悪な顔を打ち砕いた。勝利はブリタニアの手に渡った。

バトリンは主人の手下の巨人たちが耐えて来た苦しみを感じていた。彼は床の上で哀れに泣き叫んだ。「私はどうすればいいのだ?」

「彼らの力を受け継ぐがいい。」目の前に広がる光景は、フェローシップ至高のブラックロック、“テトラヘドロン”へと移り変わった。

山の頂きに鎮座する暗きピラミッドは、沈み行く太陽の光を屈折させ、ブリタニアのとある島へ焦点を合わせているように見えた。ライキュームを照らす魔法のトーチが爆発する寸前に火花を散らすのが見えた。炎の中で右往左往するメイジたちは、自分たちの呪文が誤っていたか、あるいはこの状況に拍車を掛けたであろうことを悟った。偉大なる図書館が焼け落ちると、ムーングロウの残滓は暗闇と狂気へと埋没して行った。

バトリンは身を起こしながら言った。「これを実現させる。」

「なれば、お前は暗闇の探求の道を終える。」

バトリンは立ち上がろうと、よろめきながら言った。「間もなくです。主よ。間もなくです。」
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