血塗られた銀 - Silver and Blood - 2020/08/27更新

出典: UO公式ニュースレター#52
https://mailchi.mp/broadsword/uo-newsletter-52?e=9d50be33bd

By EM Malachi

ゆうに数十はあろうかという磨き抜かれた銀色の三角形が、キャンドルの灯りを映して明滅していた。群衆のほとんどはフェローシップの者たちで、数人の部外者たちが外側を取り囲んでいた。太陽はすでにサーペンツスパインの山脈に沈み込み、月は雲の影に隠れていた。フェリドウィンの死から一年、暗い夜になりそうだった。

イオロが人ごみの中を通って彼が面倒を見ている人々のもとへ行くと、フェローシップのローブを着た男にぶつかった。その時、思いがけないことに、チェインメイルの音がした。イオロが挨拶をすると、男は眉をひそめて群衆の奥深くへと押し入って行った。イオロは群衆を観察し、他にも武器や防具が隠されていることに気付いた。心配になった彼は、救貧院にいる母親の一人、アリナのもとへと向かった。「子どもたちを集めて、あなたが信用する人々には家に戻るように伝えてほしい。」

アリナは驚いた顔をして、彼女の娘の肩に手を置いた。「何があったの？」

「後で説明する。何事もなければいいんだが。波止場でカミーユを見かけたら、子どもたちを寝かしつけるのを手伝ってもらってから、しばらくお茶を飲んでくつろいで行くよう、頼めるかい？」

アリナは救貧院の知り合いに声を掛けに行こうと娘をなだめ始めた。 「年老いた未亡人のカミーユが、安全に過ごせるようにするわ。彼女は仲間よ。」二人は急いで出て行った。

イオロはフェローシップの家の奥へと歩いて行った。床板をはずし、隠しておいたクロスボウと矢筒を取り出した。バトリンが演説を開始するのを見計らって、イオロは建物の外に出た。

「私の兄弟たちよ！ 一年前、弟のフェリドウィンが殺された。私たちの親友はこの地の混乱に巻き込まれて殺されたのだ。私たちが築き上げたものを、混沌が破壊し続けている間は、私たちは価値ある報酬を得ることはかなわない。絶え間ない不信と暴力の中で団結はあり得ない。
だから今、 フェリドウィンが私たちにしてくれたように、あなた方が忠義を尽くしてくれることを希望する。今宵、私たちは追悼しよう。フェリドウィンを、そして私たちが成し遂げなければならないことのために捧げられる必然の死を。もう時間がない。私たちの流儀を守らねばならない。行動しなければ、彼らは私たち全員を滅ぼすだろう。街へ出ろ！ 今宵、私たちはブリタニアを手に入れるのだ！
フェリドウィンのために！ フェローシップのために！」

バトリンが演説を終えると群衆は唸り、武装した者は武器を抜いた。大勢の人々がバトリンを取り囲み、街を西へと移動し始めた。イオロはカルトのリーダーに狙いを定めようとしたが、あまりにも多くの人々が周りにいた。今は様子を見るしかないと判断したイオロは、近くの家に火を着けようとしていたフェローシップの扇動者を止めることにした。

イオロは街の別の方角で飛び交う怒号と衝突音を聞いた。狂信者たちは攻撃のため街の要所を占拠していたが、幸いなことにロイヤルガードたちはすでに武装しており、すぐに対応することができた。スカラブレイのレンジャー部隊がバーチャーパスブリッジで暴徒を斬りつけた。

年老いた名もなき女が、武器も持たず、まるでバンシーのように叫びながらアーチャーに向かって走って行った。イオロは彼女がコーブのフェローシップ施設の出身であることを見て取った。混乱した若きアーチャーは矢を放ち、女を即死させた。他の非武装のフェローシップの信者たちも彼女に続き、矢の壁を前にして自らの命を次々と投げ出した。レンジャーたちはついに陣地を譲ったが、暴徒たちは血まみれになっていた。

北西の方角から警鐘が鳴り響いた。手下らの死体の中にバトリンらしき姿は見られないまま、イオロはその方角に向かった。墓地方面へ向かう道すがら、彼は市の警備隊と合流した。視界に入った時には北から来たフェローシップの一団が、すでにそこに到着していた。バトリンは彼らの前で指揮を執っていた。

イオロはクロスボウの引き金を引いたが、ボルトはカルトリーダーの周囲を曲がるようにして不自然に外れた。イオロは前に飛び出し、バトリンを街へ引きずり戻そうと地面に叩き付けた。背中に鋭い何かが突き刺さるのを感じたイオロは振り返り、バトリンの用心棒であるエリザベスと対峙した。長身の女は彼の腹を蹴りながらニヤリと笑った。土にまみれ、悶えながら、イオロはエリザベスの銀のメダルが血に染まっているのを見た。