王室広報官のRiccioです。
今回はナーマさんからの依頼で、モノボケなど、笑い芸に長けた冒険者さんを募集とのことです。
お友達のラフレシアンさんが、よくない者にとり憑かれているそうで、除霊と浄霊ために必用とのことです。
モノボケに必用なアイテムは取り揃えていますが、持ち込みも可能だそうです。もちろんダジャレやギャグもOK!
なお、憑りついている者ですが、生前お笑い系の吟遊詩人をしていた方のようで、みんなで笑わせ、満足させ、成仏させる計画とのことです。
皆さまのご参加をお待ちしております。
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◆開催日時:7月29日(火)22:00~
◆集合場所:Britain広場********************************************************
注意事項:
◆ 予期せぬ出来事が発生するかも知れません!貴重品はなるべく持ち込まないよう、お願いします。
◆ 以下に該当の場合、あるいはEMが問題ありと判断した場合はコールのうえ、イベント中止の措置を取らせていただく場合があります。
- イベント進行の妨害、かく乱行為。
- EM、あるいはほかのプレーヤーに対する侮辱的発言、またはそれに準ずる行為。
◆ 皆さんのイベントです。マナーを守って楽しく参加しましょう!
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プロローグ
「う~ん……、むずかしいなま~。師匠~!」
「はいはい、まずは一息つきましょうか」
優雅にカップを掲げ、ハテナは湯気の立つハーブティーを差し出した。ここはブリテイン郊外にある、ハテナの別邸。ナーマは、師であるハテナから占いの手ほどきを受けている真っ最中だった。
数ある魔法のなかで、変身・攻撃・防御系の基礎はすでに習得済み。ナーマはさらなる知識を求め、ハテナの本業である占いに本格的に挑戦することにしたのだ。
占星術、水晶占い、タロット。どれも順調にこなしていたナーマだが、ついに難敵にぶち当たった。
それが、数秘術。
生年月日をもとに数を導き出し、運勢や才能を分析するこの技法。そう、つまりは“計算”が必要だった。
「でも師匠、不思議ですね。誕生日だけで運勢がわかるなんて」
「人にはいくつかのパターンがあるのよ。完璧じゃないけど、大体は当てはまるわね」
ハーブティーをすすりながら、尋ねるナーマに、腕を組み思案顔のハテナが答えた。
「でも、誰がこんなことを調べたんですかねぇ?」
「さぁ、どこぞの暇人か、偉大なる創造主さまかしら?」
「出たー、創造主!!」
ナーマは「余計なものを作りやがって」と心の中で毒づいた。
もっとも、彼女の正体はブラッドワーム。モンスターでありながら、稀な個体として知性と会話力を備えた存在だ。物覚えは早く、理解も鋭く、何より学ぶことが大好きだった。
ナーマはハテナだけでなく、屋台に集う名だたる面々からも学んでいた。
天使のレミエルから宗教学と神聖魔法。龍族のドラ子からは体術およびドラゴンブレス。麹の妖精からは精霊術とダンジョンの知識。最近屋台に現れるようになった、ローブ姿の男には戦術と騎士学に帝王学、死神からは神学や疫学、死霊術、呪術、降霊術なども教わっている。
もはや貴族の高等教育を超える知識量だが、本人にその自覚はない。
特に特筆すべきは、ドラゴンブレス。
ドラゴンに変身して放つ一撃であり、教えたドラ子ですら「まさかできるとは…」と驚いたほどだ。
だが、そんな万能ナーマにも苦手はあった。それが、ただの“計算”。
「ここでつまずいてどうするのよ。まだ水晶や占星術の上級編もあるのにどうするのよ?」 ハテナの呆れた声をよそに、
「でも、やっぱりできないなま~!」
集中力の切れたナーマは、ついにブラッドワームの姿に戻ってしまった。姿が変わる時の「ボン」という音と、わずかな煙が部屋に広がる。
その姿に、ハテナは腕を組みなおし、静かに言った。
「ナーマちゃん。少し内観してみましょうか?」
「ないかん……?」
内観とは、自分自身の内面を見つめ、自己理解を深めるための手法。簡単に言えば、“自分の心の声を聞く”作業だ。
「何がしたくて、何のために学んでるのか、自分に問いかけてみて」
そう言って、ハテナはノートとペンを差し出した。
——自分のやりたいことを全部書き出す。
それは“ジャーナリング”と呼ばれる手法で、自己理解を深めるための第一歩だった。効用としては、脳の中が整理できるのでスッキリとし、自身の感情と親密になれることだろう。
ナーマは書いた。夢中で、心の奥を掘り下げていった。好きなことを分類して、自身のことを客観的に観察する。
すると、見えてきたのは・・・
友達を作りたい。
世界を旅したい。
仲間と一緒に楽しく生きたい。
そのきかっけとして、知識や魔法を身につけることにより、仲間が困った時は助けることもできる、それが自分の本音だった。
数日後。
「そうよ、できるじゃない!」
「はい、師匠っ!」
内観を終え、心を整えてから取り組むと、数秘の計算もするすると解けていく。
「これで、あとは実践ね。お友達とか、身近な人を占ってあげるといいわよ。あと・・・」
ハテナは指を立てて言った。
「必ず、少しでいいから“対価”をもらうこと。お菓子でも十分。それがプロの心構えでもあり、行動のエネルギー源でもあるの」
「ラジャー」
ナーマはぴしっと敬礼。
お調子者だけれど、学びに対しては誠実なブラッドワーム。こうしてまたひとつ、ナーマは自分の道を見つけたのだった。
◆ ◆ ◆
週末。ブリテイン、ブルーボアの店内。
店内には、ヒトの姿をしたナーマと、ふわりと気品を纏った少女ラフレシアンの姿があった。
「ラフレシアンちゃん、最近顔色がよろしくないけど。なにかあったなま?」
ナーマが心配そうに覗き込むと、ラフレシアンは微笑みながら首を横に振る。
「ナーマさん、わたくしは大丈夫ですの。……でも、少し占っていただけないかしら?」
ラフレシアン・ロナ。王都の名門ロナ家の三女であり、父ディノは伯爵で内務卿を補佐する次官という超上級貴族。その彼女と平民であるナーマがなぜ仲良しかというと、きっかけはグッドイーツである。
グッドイーツでは、パン以外にスイーツも取り扱っている。二人とも新作のイチゴタルト狙いで同店を訪れ、最後の一つを取り合った仲であった。
二人とも「分けるなま~」「分け合いませんこと?」似たことを口にしたので意気投合。それがきっかけで今では友人となっていた。意外なことに、ナーマは平民なのにラフレシアンの父親にも認められている。
友人となってから一度、ラフレシアンの家を訪れた際、父ディノとバッタリ遭遇。その時、娘の友人として相応しいか見定めるべく、彼は次官として取り組んでいる課題を持ちかけてきた。
『 昨今の異常気象への対策、君ならどうする?』
それに対しナーマは、
『 渇水に対しては、農業用のため池づくり、大雨に対しては洪水抑制と砂防機能を有するダムをつくるなま~ 』
他にも、低地での高機能堤防と遊水池や放水路の整備などを提案。聞かされた父は驚嘆し、ナーマを認めたのだ。
その知識の源は、例の屋台の常連客である。「知識は時として、最高の武器にも防具にもなる」とは師であるハテナの言葉であった。ナーマの提案は公共事業として採択され事業化。各地で設置に向けた調査や設計が行われている。ただ、王が行方不明になっている影響で、遅れも生じている。
以後、ラフレシアンの父親は、ナーマのことを実の娘同様に可愛がっており、娘と同じ王立の学園への入学を勧めている。ただし、ナーマは正体がバレるのが嫌で回答は保留にしていた。
ナーマは、正体がブラッドワームだという事実をまだ明かしていない。
「占いは、もう少し静かなところがいいなま~。ここだと人が多すぎて集中できないよ」
ナーマは、駆け出しということもあり、占いには意識を集中する必要があった。特にブルーボアのような店だと、他者の気や波動などの影響もあり、正確に占えない可能性があるのだ。
「それでしたら、わたくしの部屋でどうかしら?」
「大賛成!」と言って、満面の笑みのナーマ。
そうしてナーマは、ラフレシアンに連れられて王都にあるロナ家の屋敷へと向かった。
訪問は二度目だが、室内装飾の豪華さにはやはり心が躍る。壁には数々の名画、ミノックの“セクハラ像”まであって、さながら美術館のよう。中には“ヒトの頭が串刺し”という物騒な展示もあったが、ラフレシアンにとっては日常風景らしい。
一方でナーマの家というか、巣は穴倉になっていて、仲間の食べ残しなどのゴミが散乱しておりとても不衛生。最近は師匠の勧めで人間の部屋を借りているとはいえ、文化的水準の違いは明らかだった。
そんなことを考えていると、不意にラフレシアンが声をかけてきた。
「こちらですわ」と案内されたのは、2階にあるラフレシアンの私室。
開かれた扉の奥には夢のような空間が広がっていた。
「カワイイ!」思わず声が出てしまったナーマ。
薄緑の壁紙、植物が優しく包む空間。星形のモビールが天井からぶら下がり、草原のような絨毯、そして天蓋付きベッド。星空の草原で眠るような、夢のような部屋だった。
「どうぞ、こちらに」
草原の中央に置かれたティーテーブルに招かれ、ナーマが腰を下ろそうとすると、いつの間にか現れたメイドがさりげなく椅子を引いてくれた。
「ななななま~!夢に見た貴族の生活~~!」
「……はい?」と困惑するラフレシアンに、ナーマは何度も感動を口にする。
そこへ、アフタヌーンティーが運ばれてきた。ケーキスタンドにはサンドイッチ、スコーン、ケーキ……まるで絵本の世界。
「夢に見た貴族の生活~~~!!」
二回目。
「そんなに驚くことかしら?でも、気に入ってもらえたようで嬉しいわ」
ラフレシアンにはこれが普通。環境の違いとはかくも大きい。1時間ほどでケーキタンドを彩っていたものが消え、ティータイムが終わりを告げるころ。
「……そろそろ占いをお願いできないかしら、ナーマさん」
さっきまで和らいでいたラフレシアンの表情が、一変。どこか沈んだ声と視線。ナーマは事の重大さを察した。
「分かったなま……」と、バックパックからタロットカードを取り出す。
シャッフルを始めると、早くも「ペチ」と音を立てて1枚飛び出した。ジャンピングカード。しかも、絵柄は正位置の《悪魔》。
「いきなりなま……」とつぶやきつつ、ナーマはシャッフルを再開する。出た絵柄については覚えておくことにした。これは師の教えでもある。
その間に、占いを依頼してきた理由を聞いてみることにした。
ブルーボアでは『大丈夫ですの』と言っていたラフレシアンだが、実は最近ひどく体調が悪く、倦怠感と不眠が続いているという。肩も重く、複数の医師に診せたが原因不明。中には「心の病」と断じた医者もいた。
既存の医学では解決に至らないと悟ったラフレシアンは、解決方法を医学以外に広げることにした。
そんな時、グッドイーツで知り合ったナーマが、占いを学んでいると耳にしたので、藁にもすがる思いで、ナーマに占いを依頼したのだ。
スプレッド完了後、ラフレシアンは聞いた理由を元に1枚目のカードを引く。
またもや《悪魔》。正位置。ジャンピングカードとまさかの被り。
その後も会話を進めながら、カードを引くがヤバイ絵柄ばかり。死神、塔、審判(逆)、悪魔……まるで厄災のフルコンボ。
(なんか、やべ~カードだらけなま~。なんじゃこりゃぁ)
心の中でつぶやき、青ざめるナーマに、ラフレシアンの表情も強ばっていく。
しかし、師匠ハテナの教えを思い出す。
『 占いは、相手を元気づけるためにあるものよ。カードの内容が絶望でも、希望を持たせる“導き”を伝えなさい 』
インチキ占い師のように不安を煽って、アイテムを高額で売るような真似は絶対にするな、と。ナーマは言葉を慎重に選びながら、質問を重ねていく。
そしてたどり着いた結論。
「ラフレシアンちゃん……多分だけど、よくないモノが憑いてるなま」
ナーマは、導き出した結果をありのまま伝えることにした。
「……え」
結果を聞いて固まるラフレシアン。
口がポカんと開き、おでこが青くなり、縦の線がいくつも入った状態。そんな彼女を置き去りにして、最後に“ナーマとの関係”を占って1枚。
出たのは《法王》。正位置。
これは、助けてくれる存在の暗示。知恵や導き、そして信頼。
「おぉ~っ……!」と胸を撫で下ろすナーマ。
引き続き、固まっているラフレシアンをそのままにして、数秘も見てみることにした。年で見てみると、どうやら、いまはサイクル的にどん底であった。よく言えば、これ以上悪くなることは無い。
大病を患ったり、命を落としたりすることは考えにくい。これで法王と合わせてプラスポイントが2つになった。あとはどうやって希望を持たせるかである。ナーマは瞬時に考えをまとめ伝え始める。
「確かにどん底だけど、これからは上昇するしかないよ!」
ラフレシアンは“上昇”という言葉を聞いた途端に、血色がよくなり、口がゆっくりと動き始めた。
「……でも、わたくしはどうすれば?」
「任せてラフレシアンちゃん!師匠に聞いてくる!ぜっっったい大丈夫なま!!」
タロットの結果は、悪意があったわけではない。ただ、彼女の様子があまりにも気になったのだ。あれだけ不吉なカードが出そろえば、誰だって不安になる。
だからこそ、ハテナに見てもらおうと思ったのだ。
ナーマはこっそりと、ラフレシアンの髪の毛を一本持ち帰った。
◆ ◆ ◆
翌日、ナーマはブリテイン郊外にあるハテナの別邸を訪れ、ラフレシアンの状況をかいつまんで説明した。そして、持参した毛髪をそっと差し出す。
艶やかで、ふんわり甘い香りが漂うその一本から、彼女がどれだけ丁寧に自分を整えているかがよく分かる。
ハテナはそれを受け取り、目を閉じて小さく呟く。
「──『Слушай, Спящий Голос』」
その瞬間、毛髪が淡い光に包まれ、ゆっくりと消えていった。
燃えたわけではない。なのに、跡形もなく溶けるように、光の粒となって空中に溶けていった。
「……やっぱりね。タロットの通りよ」
ハテナが静かに言った。
「ずばり、ゴーストが憑いているわ」
「なま~」
(やっぱりか…)ナーマは思わず溜息をついた。あれだけの不吉カードが揃えば、ある程度の予測はついていた。でも、問題は“どうやって”それを解決するか、だ。
ハテナの話によれば、今回のゴーストは少々厄介な相手だという。
「無理に引きはがそうとすれば、ラフレシアンちゃんにも危険が及ぶ可能性があるわ」
「じゃあ……どうすれば?」
ハテナが1枚のカードを引くと、奇妙な図柄が出て来た。
悪魔の手のところに、女帝の頭が刷られていたのだ。まるで悪魔がモノボケをやっているように見えて、ハテナはクスリと笑う。
「師匠!そのヘンテコなカードは???」
「これは誤植よ。混ざっていたのを忘れていたわ。プププ」
ハテナは、笑いながら答えた。
「そうよ、笑わせるのよ。楽しい気持ちにさせて、満足してもらって、成仏させるの」
「笑わせて、成仏?」
「このゴースト、生前になんらかの劣等感を抱えて、この世界に深い恨みと未練を残していたようね」
ハテナは、小さな声で呪文を唱えると、表情がわずかに曇る。
「なるほど。もともとは吟遊詩人だったみたい。人を笑わせる内容で、最初はコンビを組んでやってたようだけど。でも、意見の違いで解散。そこから一人で活動するようになったけど……思うように人気は出なかった」
「それで、食べていけなくなって……?」
「そう。けど、彼はそれを世間のせいにした。『自分は悪くない。客の知性が低すぎる。そんな連中を作った社会が悪い』ってね」
ナーマは思わず身震いした。どこまでも歪んだ自己正当化。そこから生まれる憎しみ。
「時間が経つほどに、その感情は増幅していった。やがて、それは憎悪に変わり、死してからは悪霊になった。楽しそうに暮らしている者を狙って、絶望させて、破滅させる……それが、今の目的よ」
「なまままま……、とんでもない悪霊じゃないですか」
「ええ。だからこそ、早めに手を打つ必要があるの」
二人はしばし沈黙し、やがて顔を見合わせた。
「やるなら、大勢の観客の前がいいわ。みんなで笑って、場の空気をポジティブにして、その波に乗せて送り出すのよ」
ハテナがふと例のカードを手に取り、ニヤリと笑う。
「やっぱり、これしかないわね」
「な、なんですか?」
「モノボケよ。それと浄化のタロットが必用ね」
ラフレシアンを助ける方法が定まったナーマは、広報官室へ向かうのであった。
※終了後、イベント当日のセリフを掲載しますので、全体のストーリーをお楽しみいただけます。
この記事は、イベントを企画している「イベントモデレーター」のブログのページを引用しています。
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