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Hokuto

迷い森の喫茶店-後編- (イベント)

引用元:別ウィンドウで開く https://uoemhokuto.hatenablog.com/entry/2025/11/21/162900
2025.11.21

王室広報官のリシオです。

 

今回はミニオン君から、キノコの採取を手伝って欲しいとの依頼です。

ユーの森にある喫茶店のフンギさんに教えてもらったそうで

ランプマッシュルームという珍しいものだそうです。

ユーの森から繋がるダンジョンに自生しているらしく

それなりの装備が必要とのことです。

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◆開催日時:11月23日(日)22:30~  
◆集合場所:Britain広場

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注意事項:
◆ 予期せぬ出来事が発生するかも知れません!貴重品はなるべく持ち込まないよう、お願いします。
◆ 以下に該当の場合、あるいはEMが問題ありと判断した場合はコールのうえ、イベント中止の措置を取らせていただく場合があります。
 - イベント進行の妨害、かく乱行為。
 - EM、あるいはほかのプレーヤーに対する侮辱的発言、またはそれに準ずる行為。
◆ 皆さんのイベントです。マナーを守って楽しく参加しましょう!

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プロローグ

ここは王都ブリテインにある、王室広報室。


王室直属のはずなのに
一番距離を置いている部署である。


今日も室長のネコマタコとリシオが
10月に受けたドラ子案件の資料整理に追われていた。


「室長、最近マーキュリ先輩を見かけませんね」


仕事をしているフリをして
新聞の占い欄を読んでいた室長の耳が、ぴくりと動く。


「奴なら、クリドラ探しに出たまま、連絡がないにゃ」


10月に新種の情報が入ってから
マーキュリは姿をくらましたままだという。


「しばらく、姿を見せないかも知れませんね……。そう言えば!」


リシオは何かを思い出したかのように話を続ける。


「以前から、先輩が口癖のようにミズホと言ってますが、地名ですか?」


「ちょっと、そこの魔法板を見るにゃ」


室長が指をパチンと鳴らすと、
机の隙間から黒い板がぬるりと上昇した。


表面はガラスのように滑らかで
うっすらと二人の姿を映している。


「これ……、なんです?」

「グリモンが突然やってきて、置いていったにゃ。
どうやら動く絵、映像というものが浮き出るらしいにゃ」


「危なくないですか、それ!?」

「大丈夫にゃ~。たぶん」


室長が魔法板の端に触れると
ぼんやりと光が灯り、映像が浮かび上がった。


そこに現れたのは
リシオも見覚えのある人物だ。


「モンデインですか?」

「その通り。その時に必要な映像を見せてくれるらしいにゃ。
その判断をするのは魔法板とのこと」


映像では、モンデインが
かつてのソーサリアについて語っていた。


ややあって、クリスタルが床に落ち砕け散った。
よく見ると破片の中にもソーサリアが存在している。


すると室長は再生を止め、指を差す。


「この手前に映っている大きな破片がミズホらしいにゃ」

 

「それが?」


マーキュリ曰く、ミズホの民が
そのように主張しているそうだ。


手前のものは確かに大きかった。


そこでリシオはふと思い出す。
かつて先輩が語った言葉を。


『俺はミズホの民の可能性を信じてるんだ!
あいつら、100の試練もクリアしたし
伸びしろは、まだまだあるはずだ。
そのために、もっと凶悪なクリドラが必要だ。リシオなら分かるだろ?』


あのときは意味不明だったが
今なら少しだけ理解できる気が、……しない。


やはり、意味が解らない。
ただ、破片ごとにソーサリアが存在するなら……。


「俺たちの住んでる世界も、その破片のひとつってことですか?」


「その通りにゃ!」


リシオは感心しつつも
ふと疑問を口にする。


「結局のところ、グリモンって何者なんでしょう?」


「みゃーが調べたところだと、ハテナと同じ世界から来たらしいにゃ」


「ハテナって、あの占い師の?」


「そうにゃ。あと、行商人のエックスも、その世界の出身。
彼曰くハテナは、かの世界では邪と闇の神として崇められてるらしいにゃ」


大天使レミエルも、
その話を肯定したという。


「ちなみに、あいつら全員偽名にゃ。住民票もないにゃ!
税務専門官が徴収できないと嘆いていたにゃ」


「ハテナに、エックスに、グリモン……。
ほんとに次から次へと厄介なのが現れますね」


「まぁ、広報室は本編の裏側みたいなもんにゃ。
王様が主役の小説があるとすれば、うちらはサイドスト――」


マタコの例え話が終わる前に
扉が轟音を立てて開いた。


「ミニオン君だよ! 今日は依頼をしに来たミニ!!」

 

 

満面の笑みを浮かべ
堂々と入ってきたミニオン君。


「いらっしゃい」


リシオがミニオン君を応接ブースへ案内すると
室長が紅茶を淹れ机に並べてくれた。


「今日はダージリンにゃ」

「ありがとうございます。
ところでミニオン君。この時期だから鍋の具材に関する依頼かな?」


ミニオン君は紅茶をずずーっと啜り
ふぅ、とひと息。


そして、さらりと言った。


「ダージリンも悪くないミニ。
でも、真っ赤なカエンタケティーの方が刺激があるミニ」


「……今、なんて言いました?」


聞きなれない茶の名前に困惑するリシオ。


(カエンタケ……、猛毒のキノコじゃないか!?)


リシオが二の句を継げずにいると
ミニオン君が話を続けた。


「具材探しもあるし、ついでに王様も探さないといけないミニ」


「ついでに王様?」

「そうミニ」


リシオが復唱し尋ねると
ミニオン君は事情を話し始めた。


彼によると、ミニオン王が一人で鍋の具材を探しに
ユーの森に入ったまま帰って来ないらしい。


その後、森の入口付近で
熊や狼の足跡が発見されたので、お城は大騒ぎに。


王様が森に行くきっかけを作ったのが
他ならぬミニオン君だった。


その結果……。


「王様の身に何かあったら、
ミニオン君が責任取るよう大臣に言われたミニ」


「なるほど……。つまり王様の捜索依頼ですね?」


リシオが確認するとミニオン君は首を横に振った。


「王様はあくまでも、ついでミニ。
ユーの森にある喫茶店のフンギさんに、教えてもらったキノコ探しミニ」


「フンギ……? あ、その方、先週依頼しに来てましたよ」


「それは聞いてるミニ。
ミニオン君に、おいしいキノコティーを飲ませたいって言ってたミニ」


 (あれ?微妙に話が変わってる気がする……)


リシオは思ったが、突っ込むのはやめた。
プライバシーの問題もあるからだ。


「じゃあ今回は、ミニオン君からの依頼ってことで」


「そうミニ。探すのはランプマッシュルームっていう光るキノコミニ!」


「了解。じゃあ、もう少し詳しく場所とか危険度を教えてもらえますか?」


「わかったミニ!」


ミニオン君はフンギとの出会いと
心のときめきを、なぜか頬を赤らめながら語り始めた。


リシオが聞きたかったのは
地図情報と危険度だったのだが……。


************************


ミニオン君がユーの森に足を踏み入れてから
すでに数日が経っていた。


疲れ果て彷徨っている間に
辺りは深い霧に包まれ、白一色となっていた。


鳥の声も虫の羽音も消え失せ
森全体が息をひそめているかのように、しんと静まり返っている。


体力だけは自信のあるミニオン君。

だが、さすがにこの孤独な白い世界が続けば
心にも影が差してくる。


「方向がまったく分からないミニ……」


進んでも進んでも同じ光景に
焦りがにじむ。


足跡も残らない、目印もつけられない。
霧は、迷い込んだ者の気配すら飲み込んでしまう。


そんな時だった。

白い視界の先に、
ぼんやりと建物のようなシルエットが見えた。


ミニオン君は思わず
「助かった……」と言って、急ぎ足で進む。


やがて現れたのは古風な石造りの洋館だった。


飲食店を示す看板もあるのでお店なのだろう。


窓からは明かり漏れているので誰かいるのは間違いない。


(森の奥深くにポツンとお店って、怪しいミニ……)


ミニオン君は、少し警戒したが
疲れがピークに達していたこともあり、勇気を出して扉を開いてみた。


チリンチリン


鈴の澄んだ音が、鈴の音が鳴り響いた。


中に一歩踏み入れた瞬間
ふわりと、柔らかい光と香気が全身を包んだ。


淡い光を放つクリスタルランプ
木目の濃いカウンターとアンティーク調のテーブル。


どこか懐かしい、レトロな空気。


鼻腔をくすぐる芳醇な香りは
ミニオン君も好物のキノコと思われる。


「こ、これは……、美味しいキノコの香りミニ……!」


お腹が、ぐう、と音を立てた。

 

 

「いらっしゃいませ。喫茶シャンピニョンへようこそ」


柔らかな声が奥から響く。

ミニオン君の視線の先には
エルフの女性の姿があった。


桃色のキノコを思わせるふわりとした帽子。


そこからこぼれる、同じ桃色の柔らかな髪は
胸のあたりまで静かに波打って垂れている。


きめ細やかで透明感のあるつや肌
なにも塗らなくても、ほんのりと桃色を帯びる唇。


身体の線は細いが、メリハリのあるそれは
老若男女問わず魅了するようなスタイルであった。


自分とは正反対の人だと思ったミニオン君は
思わず見とれてしまう。


「ぼ、ぼくはミニオン君だよっ!」


「あら、初めてみるお客様ね。私はフンギ。ここの店主よ」


フンギはふんわり微笑むと
ミニオン君をさっと観察した。


「森で彷徨って疲れている様子ね。
ここは、キノコティーとマッシュルームスイーツの専門店。あなたにぴったりのお茶を淹れるわね」


「嬉しいミニ!」


ミニオン君は、満面の笑みを浮かべる。

ただ、ミニオンは表情筋の作りが人とは異なるので
同族でないと分かりにくい。


「座って待っていて」


ミニオン君がカウンター席に座ると
フンギは背を向けて戸棚を開き、いくつかのガラス瓶を取り出し見比べる。


中には乾燥したキノコがぎっしり
色も形もさまざまで、見ているだけでワクワクする光景だ。


(うわぁ、全部食べたいミニ!)


ミニオン君はキノコ好きということもあり
ある程度の知識は持ち合わせている。


戸棚には知っているものもあり
お茶を楽しむよりは、食べたい派であった。


「疲労回復に効果のあるものにしましょう」


フンギは香りを確かめ、
キノコ片を選び、ティーポットへと落とす。


お湯が注がれると、萎んでいたキノコが
むくむくと膨らみ、白い湯気の中に仄かな森の香りが広がっていく。


「とてもいい香り~。早く茶を飲みたいミニ。
その萎びたキノコも食べたいミニ」


「出涸らしなんて、美味しくないわよ」


「大丈夫ミニ!」


ミニオン君の口元からつつーっと涎が垂れた。


呆れたフンギが、数回使ったあとのキノコを
皿に取り出して渡すと、ミニオン君は即座にむしゃむしゃと食べる。


「あなた、お腹が減っていたのね。
今日はスイーツの用意はないけれど、試作のクッキー食べてみる?」


「もちろんミニ!」


フンギが、木皿を出して
クッキーを並べるとミニオン君は、皿ごと食べてしまった。


「ごめんミニ。お皿も食べてしまったミニ……。でも満足ミニ!」


何故か胸を張るミニオン君。
フンギは笑いを堪えるのに必死になる。


「だ、大丈夫よ。あなたって面白い生き物だわ。そろそろ淹れ頃ね」


フンギはティーポットを確認すると
カップに入っていた湯を捨て、お茶を注ぐとミニオン君に差し出した。


「ユーティーよ。味わってみて」


「待っていたミニ!」


ミニオン君はカップを手に取り
口元に寄せると、ゆっくりと息を吸い込んだ。


気分が落ち着く、すっきりとした香りだ。


一口飲んでみると、早朝の森の涼しさと
ほのかな甘さを孕んだ、キノコの渋みが広がってゆく。


同時になぜか、
痺れるような感覚もするが気にしないことにした。


「程よく痺れて、爽快感のあるお茶ミニ」


(フフフ。それは麻痺系の毒キノコ成分よ)と心の中でつぶやくフンギ。


すっかり気をよくしたミニオン君は
そこから饒舌になった。


森に入ってきた理由や
ひょんなことからスライム化した経緯。


そして、一太郎やドラゴンとの奇妙すぎる合体事件。


(……ちょっと待った。光合成?)


フンギは途中で手を上げた。


「ちょっと待ってミニオン君」


「どうしたミニ?」


「あなた、光合成もできるの?」


「当然ミニ!」


ミニオン君は誇らしげに胸を張る。

それに対し、フンギは頭の中で思考が入り乱れる。


(光合成ができるということは植物?
だとすると保護しないといけないわね……)


「あなたは、一体何者なのかしら?」


確認のために、尋ねるフンギ。


「ぼくは、ミニオン君だよ!」


「……なるほど。分かったわ」


フンギはひとまず
害獣のミニオンとして扱うことを決めた。


もし、植物だとすれば
解毒作用のあるお菓子を持たせるつもりだった。


(う~ん。でも、イメージしていたミニオンとは違うわね……)


学校で習ったのは、獰猛且つ食いしん坊で
キノコの妖精も食べ物として見ていると……。


しかし、ミニオン君は獰猛さより
むしろ愛嬌が優っていた。


(例外の固体かも知れないけど、油断は禁物ね)


そんなことを考えつつ
気づけば閉店時間になっていた。


「ミニオン君、そろそろ閉店の時間なの」


「わかったミニ!」


気力を取り戻したミニオン君は、
短い脚で器用にスキップしながら森へ消えていった。


外の霧は不思議なほどすっかり晴れている。


(……迷わず帰れるといいけれど)


フンギはそっと扉を閉め
静まり返った喫茶店で小さくため息をついた。


「さようならミニオン君。さて、少し休憩するか~」

 

ミニオン君が帰っていくのを見届けると
フンギは椅子にふにゃりと腰を落としそのままテーブルに突っ伏した。


「ふ~、疲れた。まさか、
記念すべき最初の客がミニオンだなんて……」


フンギは、前任者からお店を引き継いだばかり。


実のところ、今日が営業初日であった。


彼女はユーの森一帯に点在する
キノコの妖精一族を率いる族長の娘でもある。


族長の娘としての責任は重く
森のキノコを守る訓練の一環として、シャンピニョン遣されたのだ。


キノコの妖精達は、
森に自生しているキノコを害獣から守護するのが本分だ。


このお店は、その活動の一環で
森の中に数店舗ある。


まるでチェーン店である。


キノコを守る仕組みについては
森の魔女に強力してもらっている。


知能を持つオーク、ゴブリン、オーガ
ミニオンなどの害獣が来たら迷わせて疲れさせる。


疲労がピークに達したころ合いで
お店にたどり着く魔法を張ってもらっている。


辿り着いた目的によってフンギの対応は変わる。


偶然訪れた旅人には
疲れを癒す特別なキノコティーを。


害獣が来た場合は
弱毒のキノコティーを淹れる。


それを飲んだ害獣達は体調を崩し
森から帰ってゆくので平和的に解決できるのだ。


そして今日。

フンギが引き継いだ店に現れた
営業記念すべき初来客は、害獣認定されているミニオンであった。


疲れるのも無理はない。


フンギは自分で淹れたユーティーを
一口すすると体の芯に染み込むような温かさに、力が抜ける。


「ふ~、ちょっと復活~!」


気を取り直すと、閉店作業へ移った。


棚を片付け、ランプに布をかけ
最後に、代々受け継がれてきた予見の水晶に手をかざす。


水晶は、うっすらと客の姿を映し出す。

 

 

「今日の来客は一件だけで間違いなし。閉店っと」


本当に便利で、外すことは稀。


そのおかげで
食品のロスも少なくて助かっている。


「終わったらアレを読もうっと」


最近の密かな楽しみは、店の日記を読み返すこと。


過去の店主が残したもので
それを参考にシャンピニョンの切り盛りをしている。


特にお気に入りはフンギの祖母のもので
月狼のルーシュの話が特に好きである。


彼はトクノの月狼を率いていた者で
後進にその座を譲った後はヒトに擬態し、世界を旅していたらしい。


旅の終わりに、
偶然たどり着いたのが、このシャンピニョン。


彼は、祖母の第一号のお客様でもある。


そして、保護した子狼のために
しばらく森に住むこととなり、頻繁に店を訪れるようになった。


日記には、祖母がルーシュへ寄せる
淡い恋心がたくさん記されていて、フンギは読むたび胸がきゅんとした。


「おばあちゃんと違って、私の最初のお客はミニオンかぁ……」


しみじみと天井を見上げ、ため息をつくフンギ。

想像していたミニオンとは少し違う。

しかし、ミニオンはミニオンである。


「光合成できるなんて、面白い奴だけど。まあでも今頃は……」


体調を崩し
再び森に来ることは無いだろう。


「明日は素敵な王子さまが来たらいいな~」

 


翌朝。

フンギは開店準備の一環として
代々の店に備え付けられた予見の水晶を覗き込んでいた。


うっすら映し出されたシルエットに驚く。


「え、またミニオン?まさかね……」


昨日のあれっきりで二度と来るはずがない。


きっと別の個体だろう
そんな淡い期待は、無情にも打ち砕かれた。


チリンチリン


鈴の音のとともに勢いよく扉が開く。


「ミニオン君だよ!」


「い、いらっしゃいませ……」


「今日もキノコティーを飲みに来たミニ!」


本当にあいつが来てしまった…。


フンギはミニオン君の体調が
気になったので確認することにした。


「ミニオン君、体調は大丈夫かしら?」


「すこぶる元気ミニ!」


おかしい。


昨日のキノコは麻痺系のもの。


過去の日記を見ても
ミニオンに対して確実に効くとあったはず。


「配分を間違えた?いや、そんなはずは……」


「配分がどうしたミニ?」


「いえ、独り言よ。今日は寒いし、体が暖まるキノコティーにしますね」


フンギは今度こそ効くだろうと
カエンタケをそっとポットに放り込んだ。

湯気とともに立ち上る刺激的な香り。

ミニオン君はごくりとひと口。


「エキゾチックな味がするミニ。体が暖かくなって来たミニ」


「そ、そう……、よかったわ……」


(あれ?効かない……!?)


翌日も。

その翌日も。

さらにその翌日も。


「ミニオン君だよ!」

 

 

「い、いらっしゃいませ……」


ミニオン君は元気にやってくるのであった。

フンギの心は日に日に削られていく。


ついには彼女は、
自分用に精神高揚系のキノコティーを淹れて心を落ち着かせる始末。


「ミニオン君って、いったい……」


フンギは学校をトップクラスの成績で
卒業しているため、キノコについての知識は豊富である。


その知識を駆使しても、ミニオン君には効果がないのだ。


フンギは歴代の店主の日記を再度確認することにした。


ミニオンではなく、ミニオン君に対し効果のあるものを探す。


以前読んだとき
フンギの知らないキノコが、そこに記載されていたのだ。


「絶対なにかあるはずよ」


調べること半刻、それらしき記述を発見した。


「あった!」


かつて冒険者の協力で入手したとある珍種の記載。


フンギもそれに倣い、冒険者の手を借り
無事に目的のキノコを入手した。


だが…。


「効果ゼロね」


潔く認めた。


「ミニオン君に、毒は通用しない…」


そこで、フンギは彼との会話を思い出してみる。


「ミニオン君は鍋用の珍しいキノコを探してたって言ってたわよね?」


そこで更に日記を読み漁ると
百年近く前の日記に興味深い記述を発見する。


「これだ!」


フンギの瞳がキラリと輝いた。

ランプマッシュルーム
仄かな光を放つ、光タケの一種のらしい。


目的のキノコを見つけたフンギは
瞬時に脳裏で、ひとつの策を組み立てる。


「これなら、ミニオン君の来店パターンを変えられるかもしれない!」


フンギは勢いよく立ち上がった。


「よーし、次に来た時は、この作戦でいくわよ、ミニオン君!」


シャンピニョンの静かな店内に
フンギの闘志に満ちた声が響いた。


数日後。

珍しいキノコの情報を得たミニオン君は
ブリテインの王室広報室へ向かったのであった。


************************


同刻。

シャンピニョンの系列店舗では
ひっそりと、とある引き渡しが行われていた。


「最適なタイミングでお客様が求めるものをベストレートで販売する行商人エックスでございます」


涼やかな声が店内に響く。

エックスの前に立つのは、淡い緑色の髪を揺らすエルフの女性。

フンギに瓜二つだが
纏う雰囲気はどこか落ち着いており、少し年上のようにも見える。


「私は店主のマニターリ(μανιτάρι)と申します」


「こちらがご依頼の方で?」


エックスの視線の先では、
縄でぐるぐる巻きにされた、ひとりのミニオンがいた。


体は茶色、しわしわ、見るからに年季が入っている。


「放せ! こらワシはミニオン王だぞ! この縛めを解かんか!!」


年老いたミニオンは王を名乗り、
じたばたと暴れているが誰も気にしていない。


「そうです。店内で暴れるので拘束しておりました」


「なるほど。では静かにしていただきましょう」


 エックスが軽く指を弾いた、その瞬間。

 パキィンッ!

 老ミニオンは、一瞬で氷像になってしまった。

 マニターリは目を丸くしてから、ため息混じりに礼を述べる。


「ありがとうございます。キノコを乱獲するので
森から追い出して欲しいのです。回収費用はお幾らでしょうか?」


「なるほど」


エックスは腕を組み、氷漬けのミニオンを観察する。

その目は、獲物ではなく商材を見る商人の目だ。

やがて口角が、ゆっくりと持ち上がった。


「このミニオン、有用な使い道のイメージが降りてきましたので、お代は結構です」


「まあ…。ではせめて、お礼も兼ねて当店自慢のキノコティーを」


「お言葉に甘えて」


エックスは丁寧に一礼し、ティーカップを傾ける。

芳醇な香りが立ち上る。


飲み終えると、
氷像のミニオンをバックパックに収め、静かに店を出て行った。


森の奥へ。
先ほどイメージが降りてきた場所へ。


そして、不敵な笑みを浮かべ、ひとりつぶやく。


「さて、今回はどのような商いができますかな」

 

※終了後、イベント当日のセリフを掲載しますので、全体のストーリーをお楽しみいただけます。

この記事は、イベントを企画している「イベントモデレーター」のブログのページを引用しています。

引用元のページは 別ウィンドウで開く こちら からご確認いただけます。

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