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Hokuto

ビルの目標と真実のクリスタル(イベント)

引用元:別ウィンドウで開く https://uoemhokuto.hatenablog.com/entry/2026/01/27/175914
2026.01.27

王室広報官のリシオです。

今年最初の依頼は、ジェロームの傭兵団で

治癒師見習いをされているビルさんからの依頼です。

 

 

ビルさんは治癒魔法の勉強をしており

古代の治癒魔法についても興味があるそうです。

子供の頃に、魔女グリゼルダに基礎は教わっているようで

しっかりとした理論もお持ちです。


ライキュームに所蔵されている、古代の魔法については、難読なものが多く理解するのも一苦労。中には意図的にミスリードするように記されているものもあります。

そんな時、ビルさんは真実の意味を読み解くことができるクリスタルの存在を知ったそうです。


真実のクリスタル


それを通せば、本当に必要な文章だけが分かる優れもののようです。

ビルさんは、場所の特定に苦労したそうですが、割り出しに成功。

ところが向かった先には多くのモンスターがいて

探すことが出来なかったそうです。

そこで今回冒険者の皆さまにお手伝いの依頼を出すことになりました。

 

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◆開催日時:1月29日(木)22:00~  
◆集合場所:Britain広場

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注意事項:
◆ 予期せぬ出来事が発生するかも知れません!貴重品はなるべく持ち込まないよう、お願いします。
◆ 以下に該当の場合、あるいはEMが問題ありと判断した場合はコールのうえ、イベント中止の措置を取らせていただく場合があります。
 - イベント進行の妨害、かく乱行為。
 - EM、あるいはほかのプレーヤーに対する侮辱的発言、またはそれに準ずる行為。
◆ 皆さんのイベントです。マナーを守って楽しく参加しましょう!

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プロローグ

 

今日は珍しく三人がそろっていた。


ブリテイン王立広報室、王都でも珍しい
「勤務実績が空気みたいに薄い」部署である。


年明け一発目。


室長ネコマタコは仕事始めの挨拶を
なぜか、すでに出来上がった状態で始めようとしていた。


「こほん。え~……本日は仕事始めにゃ!」


片手には、なぜか大吟醸で満たされたグラス。


「みんなに今年の抱負を発表してもらおうと思うにゃん!」


初出勤は年に一度の特別日。
職場での飲酒が許される神がかった日。


室長はレミエルから貰った大吟醸酒で
満たされたグラスを片手に饒舌に挨拶を始めた。


一方でマーキュリの前には、
どこからか仕入れたユーワイン。


リシオの前には健全すぎるほど
健全なリンゴジュース。


そう。実はリシオはアルコールに弱いのだ。


「まずは、みゃーから!」


室長は胸を張り、
やけに良い笑顔で宣言する。


「今年はイケメンを見つけて!寿退官するにゃ!!」


近所迷惑も気にせず大声で叫ぶ室長。


ちなみに昨年も、その前の年も
その前々年も同じことを言っている。


「頑張れよ、室長!」


軽く拳を突き上げたのは、
ミズホ帰りの男、マーキュリだった。


「ありがとうにゃ!次はマーキュリ!」


「俺は昨年発見できなかった新種のクリドラを見つけることだ!
 あと、ワコクの民も鍛えようと思ってる」


「……ワコク?」


聞き慣れない単語に、リシオは思わず眉を寄せた。


「先輩。ワコクって、破片のことですか?」

 




「リシオ。よく知ってるな」


気を良くしたマーキュリは、リシオと肩を組む。
そのまま勢いで語りだした。


「いいか、ワコクってのはな……」


マーキュリの長話は、
鉱山事故よりも避けるべき災害である。


そして案の定、話は長い。
長すぎる。


要点だけかいつまむと、
ワコクはミズホに負けないくらい伸びしろがある


モンデインの映像で
倒れた彼の目の前に転がっている破片がワコク


その影響か、ワコクには
モンデイン信奉者が一定数いるらしい


……らしい、というだけで、
リシオの理解はまだ追いついていない。


「リシオ!マーキュリへの質問は気をつけるにゃ!」


室長が割り込む。


「無駄に長い!!次は君だ!!! *ヒック*」


室長はリシオをビシッと指さした。
その指先がブレているのは、アルコールのせいだ。


「室長、飲みすぎですよ。大吟醸の空瓶、並べすぎです」


「気にすんなリシオにゃん!*ヒック*」


泥酔一歩手前。
というか、もう片足は浸かっている。


リシオは深くため息をついてから
まっすぐに背筋を伸ばした。


「今年も広報官として、困っている方を全力でサポートする所存です!」


「真面目かー。つまらんにゃ~」


「リシオ。今度ミズホに連れてってやるよ」


マーキュリは妙に楽しそうに笑う。


「あれを体験したら、お前が同じこと言えるかどうか……、楽しみだな」


(相変わらず、何を言ってるんだこの人……)


でも、真面目すぎると言われても、
今さら変えられる性格ではない。


その時だった。


広報室の扉が、ゆっくりと開いた。


「あの~……」


控えめな声。


そこに立っていたのは
葉柄のように細身で、真面目そうな青年だった。


その瞳にはリシオと同じ
誤魔化しのきかない正直さを宿している。


青年は三人を見回し
最後にリシオへ視線を向けた。


「どうされましたか?」


リシオが穏やかに尋ねると
青年は小さく頷いて口を開いた。


「依頼があるのです。私はビルです。ジェロームの傭兵団に所属しております」


「ビルさんですね。広報室のリシオと申します」


リシオは丁寧に頭を下げる。


「今日は仕事始めなので……、少し酒臭いかもしれませんがご容赦ください」


「大丈夫です」


真面目だ。
この青年、誠実さだけで出来ている。


「それで、ご依頼の内容は?」


「真実のクリスタルを探す手伝いを冒険者の方に依頼したいのです」


「詳しくお聞かせ……」


そう問うた瞬間
ビルの口から続きの言葉が発せられようとしていた。


(アカン。これは長いタイプだ)


リシオは即座にビルの言葉を遮った。


「こちらへどうぞ。二階の応接ブースでお話を伺います」


そして応接ブースへ移動した途端
室長が何故かお茶ではなく……


「はいこれ。新春スペシャル大吟醸のワイン割にゃ!」


危険物を差し出してきた。
見た目は赤ワインが薄まったやさしそうなカクテル。


だがリシオには分かる。


(これは、優しそうに見えて殺しにくるやつだ!)


「ビルさん……、室長がすみません」


「せっかくなので、一口だけ」


ビルは遠慮がちに口をつけた次の瞬間。


顔が、赤い。
一瞬で、真っ赤になった。


(この人、僕と同類だ!)


リシオは心の中で静かに握手をした。


「ビルさん。改めて事情をお聞かせください」


「おう! *ヒック*」


「……え?」


リシオの脳が一瞬フリーズした。


さっきまで誠実な青年だったはずのビルが
突然、何かに目覚めたかのように……


「実はだな!!」


リシオの隣りに移動したビルは
肩を組み饒舌に語り始めたのである。


(やばい。室長の酒、強すぎる……!)


広報室の新年は、まだ始まったばかりだった。

 

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トリンシックに滞在中のミリョクとモンちゃんは
毎日の日課を欠かさなかった。


郊外の森。


人の気配が薄く風の通りが
よいその場所で、剣技の鍛錬と川柳づくりである。


剣を振るうミリョクは
足運びと重心の移動を確かめながら
ゆっくりと呼吸を整えていた。


一見すると静かな型稽古だが
剣先には確かな緊張感が宿っている。


その姿をじっと眺めていたモンちゃんが
突然なにか閃いたたように目を輝かせた。


「ミリョクさん 今日も元気に 剣を振る。一句できたもん!」

 

 

自信満々に胸を張るモンちゃん。


時同じくして
すうっ~と冷たい風が森を吹き抜けた。


「……やはりだな」


ミリョクは剣を止め、眉をひそめる。


「不思議だ。モンちゃんが句を詠むと、だいたい冷たい風が吹く……」


「大自然が、モンちゃんの句を評価してる証拠だもん!」


モンちゃんは誇らしげに胸を張った。
自信の根拠はいつも謎だが。


「……そのポジティブさは尊敬に値する。私も見習わねばな」


ミリョクが苦笑して
剣を振り直そうとしたその直後。


彼女の動きがぴたりと止まると同時に
静かに背後へ視線を向けた。次の瞬間。


「ほう。私の存在に気付くとは」


木陰から、ぬっと姿を現したのは
傭兵然とした初老の男だった。


使い込まれた鎧。
背に負った剣。


そして、その目は獲物を
逃がさぬ鷹のように鋭い。


「何か用事でも?」


「俺はジェロームの傭兵団のオクロだ」


名乗った男は、ミリョクをじっと見る。
まるで値踏みするように。


「お嬢ちゃん、うちで本格的な剣術を学ばないか?」


「……」


ミリョクは、突然の誘いに躊躇する。


「君の剣には、伸びしろがある。かなりな」


オクロは木陰から
ミリョクの太刀筋を見ていた。


剣の軌道、足の運び
呼吸の取り方すべてを。


その結果、ひとつの確信を得た。


(こいつは伸びる)


さらに、候補生たちの刺激にもなる
そう判断したのだろう。


「私はお嬢ちゃんではなくミリョクだ。こちらはモンちゃん」


「モンちゃんだもん!
 茂みより 姿あらわす 怪しき男!」


再び、この時期にしては冷たい風が吹き抜ける。


「……」


ミリョクの表情が
ほんの一瞬だけ固まった。


「モンちゃん。初対面の人にそれはやめておいた方がいいと思う」


「えっ」


「オクロと言ったか。連れが失礼した」


「句を詠むモンバットとは、珍しい従魔だな」


「いや、実はだな……」


ミリョクはモンちゃんとの出会いについて
簡単に説明をした。


「なるほど。理解した」


オクロは肩をすくめ
少しだけ申し訳なさそうに笑った。


「ところで、私はまだ貴殿を信用したわけではないのだが……」


ミリョクは疑いの目線をオクロに向ける。


「いきなり声をかけてすまない。疑うのも無理はないな」


オクロは剣の柄に手を添える。


「……少し手合わせをお願いしても?」


ミリョクは一瞬だけ迷った。
だが、目の前の男はただの傭兵ではない。


立ち姿だけでわかる。
剣で生きてきた者の気迫が感じられるから。


「……いいだろう」


ミリョクが剣を構え
オクロもまた、同じように剣を抜く。

 

 

互いに間合いを測り、息を整え。


「始め!だもん!」


モンちゃんが叫んだ。


初撃は、穏やかだった。
互いに実力を探るための、探り合い。


だが二太刀、三太刀と重なるにつれ、空気が変わる。
金属がぶつかり合う音が森に響き、枯れ葉が舞う。


ミリョクは力ではなく技で対抗。


筋力差を理解したうえで、
最小の動きで最大の軌道を描く。


オクロは驚いた。


(……想定より重い。女の腕とは思えん)


剣圧が違う。
そして何より迷いがない。


(だが、技はこっちが上だ)


時間をかければこちらが有利。
オクロがそう判断した瞬間。


ミリョクが踏み込んだ。
一気に勝負を決めに行く踏み込みだ。


「っ!」


だが。
その太刀は空を切った。


オクロの姿が一瞬消え、
次の瞬間、背後から剣先がミリョクの首筋に触れる。


「……分かった」


ミリョクは剣を下ろした。
悔しさはある。


だが、それ以上に胸が高鳴っていた。


「オクロ殿の元で学ばせてもらおう」


「素直なお嬢さんで助かったぜ」


オクロは笑った。
その笑みは、厳しい戦場の中で培った強さの笑いだった。


そして、モンちゃんは小さくうなずく。


「弟子入りだもん……。
 これは次の句の匂いがするもん」


風が、また少しだけ冷たく吹いた。


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「俺はジェロームの傭兵団で治癒師見習いをしている」


「治癒師見習い?」


リシオの隣に座るビルは
そう切り出した瞬間
堰を切ったように語り始めた。


目の焦点が、ちょっとだけ
過去へ飛んでいるように見えた。


「元々は剣士だったんだ。傭兵の候補生として、ひたすら剣を振ってた」


剣。訓練。汗。


泥臭い努力こそが正義。
そう信じていた頃の話だ。


状況が一変したのは、一ヶ月ほど前。


教育係も兼務する副団長のオクロが
突然ひとりの訓練生を連れてきた。


傭兵団の訓練生は
当然ながら基礎を叩き込まれる。


必要な知識、剣術、判断力、胆力。
そして優秀な者だけが、候補生へと引き上げられる。


「……で、副団長が連れてきた訓練生がさ」


ビルは眉をひそめ、
思い出しただけで腹が立つ、という顔になる。


「ミリョクって女なんだが、こいつが生意気なんだよ」


その名前を聞いた瞬間。
リシオの表情が、わずかに固まった。

 

「……ミリョクさんは、面識があります」

 


ビルの勢いに飲まれず、リシオは冷静に続ける。


「Doom出身で、高ランクの冒険者資格を持っていますよ」


「そうなんだよ。ホントに驚いたぜ!」


ビルは机を叩きそうな勢いで前のめりになる。


突然現れた、実力も肩書もある新人。
しかも態度が一ミリもへりくだらない。


候補生たちは当然、ざわついた。
ビルもその一人だった。


傭兵団にも女性剣士はいる。
……いるには、いる。


ただし数は多くなく、
扱いもどこか特別といった雰囲気があった。


ビルはそれを快く思っていない。
揺るがない彼なりの公式があるからだ。


女性=剣士に不向き=サポート役


この思い込みは、ただの偏見ではない。
本人にとっては常識であり正義だった。


その原因は、家庭環境にある。
ビルの両親は、共に元傭兵。


父は屈強な剣士で、傭兵団の元副団長。
母はおしとやかな魔法士だった。


傭兵団には、魔物討伐の依頼が舞い込むことがある。
そんな時、ビルの両親は完璧なコンビだった。


父が前衛で剣を振るう。
母が後ろから魔法でサポート。


防御。強化。回復。
必要なものが、必要なタイミングで飛んでくる。


その連携は絶妙で
まるでひとつの生き物のようだった。


ビルは幼い頃からその背中を見て育った。


そんなビルの前に現れたのが、ミリョクだった。


年下。
生意気。
しかも女。


そして何より、剣で戦っている。
母とは正反対である。


(……なんだ、こいつ)


技を盗む。
癖を直す。
弱点を潰す。


努力を積み重ね、
当たり前のように強くなる。


ビルだって停滞しているわけじゃない。
怠けているわけでもない。


それなのに。


ミリョクの成長速度は著しい。
「女のくせに」なんて言い訳が、通じない勢いで。


そしてビルの胸の奥に、
はっきりとしたものが生まれる。


嫉妬。


黒くて、重くて、みっともない感情。
それは少しずつ、だが確実に育っていった。


まるで、雨雲が広がるように。


ビルは、その感情を処理できず
高圧的な態度をとるようになった。


だがミリョクは、相手にしていない。


それが一番きつかった。


怒りの行き場がない。
自分だけが熱くなって、恥をかく。


そんなとき、ビルの仲間たちが
ミリョクを追い出すための作戦を思いつく。


決闘だ。
敗者は退団するという条件付きの。


問題は、誰がミリョクと対戦するか?


そこで名が挙がったのがビルであった。
候補生の中で、彼は一目を置かれる力量を持つ。


ミリョクより勝ると皆が思った。本人も。


退団というリスクはあったが
燻っていたビルには渡りに船である。


ビルは二つ返事で引き受けた。


周囲の期待は、嫌というほどビルの背中に乗る。


「ビルなら勝てる!」


「女の剣なんて、力で押せ!」


数日後、そんな声が飛び交う中。
ビルは剣を握る。

 

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「突然だが、新人を紹介する」


訓練場に響いたのは、
副団長オクロのやけに張りのある声だった。


まるで新種の生物を発見した
みたいなテンションである。


「特別枠訓練生のミリョクちゃんだ」


「……ちゃん付けは止めろと言ったろ」


ミリョクが冷えた目で睨む。


「まぁいいじゃないか」


オクロは笑って流した。


そのやり取りだけで
周囲の視線がミリョクへ集まった。


「ミリョクだ。隣にいるのは連れのモンちゃん。
共々よろしくお願いする」淡々と名乗り、軽く頭を下げる。


隣でモンちゃんが
やけに元気よくピョコンと跳ねた。


「ミリョクちゃんは俺がスカウトした
太刀筋がかなり良い。しかも高ランク冒険者だそうだ」


オクロが肩を叩くような勢いで言う。


彼は言外にこう言っているのだ。


(俺が発掘した)

(才能を見抜いたのは俺だ)

(どうだ、すごいだろう)


ミリョクは内心ため息をついた。


(……余計なことを)


「お前ら、油断してるとミリョクちゃんに抜かれるぞ」


そのオクロの言葉に周囲がざわついた。


動揺。反発。そして、嫉妬。
耳を澄ませば、それがよく分かる。


(オクロの奴め、いい迷惑だ)


しかしミリョクは思う。
確かにオクロは強い。
ただし、絶対ではない。


出身地のDoomには、強者たちが普通にいる。
だから、ここで驚かれるほどのことでもない。


(技を研鑽すれば、オクロとも十分渡り合える)


ミリョクはそう確信していた。


「それでは今日の訓練を始めるぞ」


オクロの号令で、訓練生と候補生が別れて整列する。
日課の基礎体力づくりの時間だ。


地味で、きつくて、だが一番効くやつ。


そして数日過ごしてみて
ミリョクは分かったことがある。


ここは、剣を学ぶ場所である前に、社会だった。
傭兵団には、貴族や豪商家の次男三男がいる。


家督を継げなかった者。
騎士になれなかった者。
夢から滑り落ちてきた者たち。


この狭い世界のヒエラルキーでは
彼らは上位に立つ。


技術や教育を受けてきた分プライドも高い。
そして下を見下すのが、当たり前の空気。


一方で、冒険者上がりも少なくない。


彼らは庶民。元盗賊。騎士やガード崩れ。
雑多で、泥臭い連中が混ざる。


つまりこの場所では、
冒険者というだけで下層扱いされる。


さらに最悪なのは女性に対する態度だ。
陰湿。露骨。そして容赦がない。


だが、ミリョクは相手にしなかった。


嫌味が飛ぶ。


「お嬢ちゃんは訓練なんかせず、花嫁修業でもしてろよ」


「ミリョクはモンちゃんと川柳でも作ってろ」


「こいつDoom出身だから、化け物の血筋だろ」


ミリョクは、顔色ひとつ変えない。
まるで聞こえていないかのように、剣を振る。


その態度が、さらに火に油を注いだ。
嫌がらせはエスカレートしていく。


だが、皮肉なことに。
ミリョクの成長は早すぎた。


訓練を始めて半月。
団長が、ミリョクに目を留めた。


そしてそれはさらに嫉妬を呼ぶ。
そんなある日。


「おい、ミリョク。貴様に決闘を申し込む」

 


候補生の一人、ビルが前に出てきた。
ミリョクは剣の稽古を止め、淡々と彼を見る。


「いいだろう」


即答だった。


ミリョクは腕試しがしたかった。
ただそれだけ。


「日時と場所は後日知らせる」


言って、ビルはミリョクの前から去っていった。


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目の前には憎たらしいミリョクが立つ。


その真っすぐな視線に、ビルは一瞬だけたじろぐ。
だが、すぐに打ち消す。


絶対に勝てる。
確かに成長は早い。だが、所詮は女だ。


剣の重さ。腕力。剣圧。
そのすべてで、自分が上だと信じていた。


負ける理由がない。そう思った。


だが。


一撃。


二撃。


三撃……
数え切る前に、世界が反転する。


高ランク冒険者の腕前は、伊達じゃない。


気づいた時には、地面がやけに近かった。
ビルは、あっけなく沈んだ。


「ミリョクの剣捌きは……、華麗で、美しかった」


リシオの隣で語るビルの声が、少しだけ落ちる。


「俺のは力業。
 でもあいつの剣は“技”だった。全部が洗練されてた」


勝てるわけがなかった。
一撃でビルの弱点を見抜いたのだ。


両親から技を学んだが、
それでもミリョクには及ばなかったのだ。


「……俺、負けたら傭兵を引退するって宣言してたんだ」


ビルは視線を逸らした。
どこか遠くを見ている。


悔しさなのか。恥ずかしさなのか。
それとも、あの一太刀に、心を折られたのか。


「だから潔く辞めた。俺は約束は守る」


「……そんなことがあったんですね」


リシオは静かに頷いた。


「でもな」


ビルは、そこで少しだけ笑った。


「翌日、俺が団を去る時にミリョクに言われたんだよ」

 


「お前は、治癒師が向いてる」


最初は信用しなかった。
当然だ。皮肉にしか聞こえない。


だが、引っかかった。
心のどこかに、棘みたいに残った。


「それで俺は街のアンクで催されてるお悩み相談会に行ったんだ」


「最近流行の相談会ですね」


「そう。ミリョクの言葉が気になってな」


そこで出会ったのが。
グリモンと名乗る、相談員。


胡散臭いし怪しい。
でも、妙に核心を突く目をしていた。


「そしたらよ。そいつにも同じこと言われた」


君は治癒師向きだ。
ビルは、思わず笑ったように鼻を鳴らす。


「さすがに、偶然じゃねぇって思った」


その時。
ビルの中で、ひとつの記憶が浮かび上がったそうだ。


子どもの頃の忘れていたはずの記憶。


「俺さ……昔、好きだったんだ」


傷ついた動物を癒すこと。
弱った植物を、そっと助けること。


小さなヒール。
誰にも自慢できないような、ちっぽけな魔法。


「魔法をこっそり教えてくれたのが、グリゼルダって魔女なんだ」


その名が出た瞬間、
部屋の空気が、ほんのわずかに変わった。


リシオは即座に反応することはせず、
ただ、眉をわずかに動かす。


「……ということは、グリゼルダの弟子、ということですか」


グリゼルダ。


スカラブレイ郊外の廃屋に住み
表向きは美白研究家を名乗る、名の知れた魔女だ。


「弟子ってほどじゃない。……あの魔女、有名なのか?」


「それはもちろんです」


即答だった。


「なるほど……」


ビルは小さく息を吐き、続ける。


「それで、俺は魔法を極めることにしたんだ」


そのために通うようになったのが
ライキュームの図書室。


古代魔法に関する書物も多く
表に出回らない資料も揃っている。


だが、古書というものは、素直ではない。


わざと難解に書かれていたり
暗号化されていたり。


ひどいものになると、
真実に嘘を混ぜているケースすらあるという。


そんな中、ビルは偶然読んでいた書物で
それらを見抜く手段の存在を知った。


『真実のクリスタル』


古のリワード。


それを通せば
本当に必要な文章だけが浮かび上がるという。


ビルは場所の特定に苦労した。
だが、どうにか突き止めた。


しかし、向かった先はモンスターの巣窟。
単独で踏み込むには明らかに無謀。


「だから、ここに来た」


正面に移動したビルは
真っすぐにリシオを見る。


「俺は、もっと魔法に関する知識を高めたい。
 そのためには、古い書物の隠された意味を見抜くクリスタルが必要なんだ」


リシオは一度、内容を頭の中で
整理してから頷いた。


「わかりました。では、依頼書に記入をお願いします」


そう言って、机の引き出しから
書類を取り出し、ビルの前に差し出す。


紙の擦れる音だけが、静かに響いた。


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「正と光の神アグライ様の使徒466、目覚めの時です」


部屋に響き渡る無機質な声に
466と呼ばれる彼はゆっくりと目を開く。


周囲には無数の装置が並ぶ白い壁の部屋。


突然、視界を遮る形で現れたのは
ショートヘアの女だ。


色白で、整いすぎた顔立ち。
美しいはずなのに、その瞳には
まるで氷が張っていた。


視線そのものが冷たくて
皮膚が粟立つ。


466が数回まばたきをすると
女はそれを起動確認でもするように
無感情に言葉を継いだ。


「わたくしはアグライ様にお仕えする上位の使徒」


美しい声。
だが、そこには熱がない。
女は冷たい視線のまま、淡々と告げた。


「466。あなたはこれからソーサリアに行き、
 邪と闇の神を討つのです」


命令だった。
選択肢など最初から存在しない。


「向こうでは名が必要となります。
 セドラ(Sedra)というコードネームを与えます」


言って、見目美しい女の手が
セドラの額に触れた瞬間
頭の中へ、映像がなだれ込んできた。


怒涛。
圧倒的な情報量。


この世界の仕組み。
光と闇の関係性。
光の神アグライが目指す世界。
アグライ神の正当性。
邪と闇の神の説明。
世界の現状。
ソーサリアについて。
セドラの役割について……。


あまりにもの情報量に
脳が焼き切れそうだったが堪えて理解した。


普通ならギャバとかいう脳の保護機能が働き、
情報量は制限される。心が壊れないように。


だが、目の前の女は
その安全装置を躊躇なく壊していた。


あるいは、機能を低下させ
必要な情報を、容赦なく送り込んでいる。


セドラは歯を食いしばって耐えた。
理解しなければならない。
できなければここで終わる。


「……私に、神を討てとおっしゃるか」


ようやく吐き出した言葉。
女は、軽く頷いた。


「セドラ。お前はそのための能力を備えている」


淡々とした声のまま、宣告する。


「バランサーが去ったこの世界の運命は
 お前の働きにかかっているのだ」


セドラの役割は重要だと言いたいらしい。
拒否権などなさそうだ。


「セドラ。自分の役割について理解できたか?」


相変わらず感情のない声で
話を進める見目麗しい女。


セドラは、自分が何者なのかを考えた。
しかし、何も思い出せない。


目覚める前の記憶が、まるで存在しない。


掘ろうとすると、思考が霧に溶ける。
触れようとした瞬間に、かき消されるような感覚。


そのくせ、やるべきことと
その方法だけは鮮明だった。


どの魔法を使うか。
どの角度で刃を入れるか。
どうすれば気配を消せるか。


手順だけが、最初から身体に刻まれている。


(……記憶を操作されたな)


客観的な推測が、自然に浮かぶ。
だが結論は同じだ。


(考えるだけ無駄だ)


反論して処分されても困る。
記憶がなくても、判断力だけは残っているらしい。


セドラは役割を果たすため、必要な確認を始めた。


体躯は申し分ない。
筋肉の張りも、重心の安定も、訓練されたものだ。


知識も豊富で、イメージが湧く。
魔法も同じ。スペルが脳裏に浮かぶ。


ソーサリアへの行き方も分かった。
転移門から容易に渡れるらしい。


他の世界に本当に行けるのか
疑問はあるが、既に闇の神を含む数名が渡っている。


意外と難しいことではないのだろう。


最後にこの世界の状況については、
細部伏せられているようだが、概要だけは理解できた。


光と闇の比重が崩れ
全てが光に覆われようとしている。


比重を保つために存在していたバランサー。
彼がこの世界を去ってから、異変が各地で起こり始めた。


それはまるで、世界そのものが比重を保つために
修復を図っているように見て取れる。


光の勢力は原因をソーサリアに逃れた、
邪と闇の神に求め、討伐を決めた。


その役目が己に与えられた使命だ。


セドラは思う。


(光と闇を天秤にかけるなら……闇の方に分がある)


直感ではない。
計算だ。


だが、それを目の前の女に伝える必要はない。
余計なことを言えば、削除される。


セドラは淡々と告げた。


「理解した。転移門から
 ソーサリアに向かい、仕事に取り掛かる」


「よろしい。あちらに行き
 他派閥ではあるが、使徒299のグリモンに接触するのだ」


見目麗しい女はそう言った直後
煙のように掻き消えた。


残されたのは、冷えた空気だけ。


そしてセドラは、ひとつ息を吐く。
世界の命運が、自分の手の上にあるらしい。


……皮肉だ。
自分が誰なのかすら知らないのに。


∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽


転移門の前でセドラは一つ疑問を持つ。
事前情報から察するに、ソーサリアは絶対に何かある。


邪の神は、わざわざ窮屈な肉体を作り
そこに入り不便な生活を楽しんでいる。


バランサーは、訳の分からない商人に。


同じ使徒であるグリモンにいたっては
アンクでお悩み相談という意味不明な活動を始めている。


(俺はあちらに行っても正常を保てるのだろうか?)

 




不安な気持ちを抱えつつ、セドラは転移門をくぐった。


(着いたら情報収集のため真実のクリスタルを確保しよう)

 

※終了後、イベント当日のセリフを掲載しますので、全体のストーリーをお楽しみいただけます。

この記事は、イベントを企画している「イベントモデレーター」のブログのページを引用しています。

引用元のページは 別ウィンドウで開く こちら からご確認いただけます。

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