王室広報官のRiccioです。
今回はモンバットのモンちゃんから、ヘルプ要請が来ております。
マラスのピラミッドに住んでいるスフィンクスが危篤だそうで、それを助ける手伝いをお願いしたいそうです。
とある場所へ行けば、治療のヒントが得られる可能性があり、ミリョクさんが先行しているそうです。
モンちゃんと冒険者の皆さまは、とある場所で合流して、スフィンクスを助ける方法を探る形になります。
※現在、ピラミッドにいるのは、代役の方(そっくりさん)だそうです。
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◆開催日時:4月24日(木)22:00~
◆集合場所:Britain広場********************************************************
注意事項:
◆ 予期せぬ出来事が発生するかも知れません!貴重品はなるべく持ち込まないよう、お願いします。
◆ 以下に該当の場合、あるいはEMが問題ありと判断した場合はコールのうえ、イベント中止の措置を取らせていただく場合があります。
- イベント進行の妨害、かく乱行為。
- EM、あるいはほかのプレーヤーに対する侮辱的発言、またはそれに準ずる行為。
◆ 皆さんのイベントです。マナーを守って楽しく参加しましょう!
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プロローグ
ここは、とあるダンジョンの奥深くにぽつんと佇む、屋台「森の賢者亭」
以前は森の屋台と呼ばれていたが、ハロウィンの時期以外も営業することになったため、偉大なる創造主により、屋号が定められたのだ。
木々に囲まれたそこは、人間、亜人、動物、天使、魔物、果ては精霊や幽霊までもが、夜な夜な酒を酌み交わし、世間話に花を咲かせていた。
「いらっしゃい、ナーマちゃん!」
店主のオークの吉田が、最近訪れるようになったブラッドワームの少女に声をかける。分厚い腕を振る吉田は、ここの名物オヤジであり、実は料理の腕がやたらといい。
「また来ちゃったなま~。たこ焼きとトマトジュースをくださいな」
「へいよっ!」
「もうすっかり常連の仲間入りだね~。それじゃぁお前ら!ナーマちゃんに、かんぱ~い!」
音頭を取ったのは、純白の羽をきらめかせる天使のレミエル。隣には陽気なドラゴン娘のドラ子、そして勢いよくグラスを掲げるパン屋のサキと、神出鬼没な占い師の???の姿もある。
ちなみにサキが飲んでいるのは、限りなくノンアルに近いシュワシュワである。
「そういえば、エクソダスのおっさんはどこ行ったの、吉田?」
「サキちゃん、あいつは今夜もVIPルーム送りだ」
「えええ~、また~!?」
この「森の賢者亭」では、酔っぱらって暴れそうになった者は、即★隔離部屋行きである。通称VIPルーム。もっとも、そこにはふかふかの座布団と睡眠用のリラクゼーション魔法がかけられているので、実質おもてなし空間だ。
これは、かの創造主が定めた不文律によるもの。
『刃傷沙汰、絶対厳禁』
一度でも破れば、屋台の記憶ごとその存在がぼやけ、二度とここに辿り着けなくなるという。
「そういえば???のおば…お姉さん。最近スフィンクスを見てない?」
サキのひと言に、???が一瞬だけ鬼のような顔を浮かべたあと、軽く鼻を鳴らす。
「酔った勢いでレミエルの“天使の鏡”なんか使っちゃったからじゃない? あれでバグった可能性があるわね」
そう言った瞬間だった。
「……誰か、来る」
???が空気の揺れを感じ取った次の刹那、場の喧噪がすぅっと静まる。
ジュウ……というたこ焼きの焼ける音と、香ばしい匂いだけが、緊張に包まれた空間に漂っていた。
「……血の匂いがするなま~」
血に敏感なナーマちゃんの嗅覚が働いた。その視線の先、屋台に続く正規の道とは異なる脇道。そこから、一人のヒトの少女がふらりと姿を現した。
彼女の身体は、真っ赤に染まっていた。
「……やっと、着いた……。私はミリョク、ここが……森の賢者亭……かしら」
少女はその場で崩れるようにしゃがみこむ。限界だったのだろう。
「すぐに回復させてあげるわ」
少女が敵ではないと判断した???が呪文を唱えると、傷ついた身体が淡い癒しの光に包まれた。止血、回復、そして再生の魔法が複層的に発動し、命をなんとか繋ぎとめる。
「この子……“ミリョク”って言ったわね。もしかして、ミワク姫の……?」
少女はわずかに頷き、視線を天に逸らすと……
「モンちゃん……私は……たどり着いたわよ……」
言葉を残すと、そのまま意識を手放した。
ーーーーー
時を遡ること数日、ここはアンブラの街中。
ロマンス王子に囚われていたモンちゃんは、冒険者の手を借りてラビリンスの脱出に成功。その足でアンブラの街へとやって来ていた。
目的は、ただ一つ。
「川柳を詠むもん!」
それだけだ。
命からがら抜け出した直後だというのに、モンちゃんは恐れ知らずにも句を詠むため、アンブラに滞在した。
そして滞在最終日、冒険者たちと合流したモンちゃんは、いくつもの句を詠んだ。
アンブラに・星降る夜は・アンブレ
安全に・ブラつける街・怖くない
唱えよう アンブラカタブラ 棺開く
ミートパイ・中身はメアの・悪夢かな
ねえモンちゃん ええとこいかへん だいじょうぶ
韻踏んで・罠まで踏んで・あららのら
鹿の地下・湧きが続いて・装備減り
盗みレア 本棚一度も 見た事ない
通るなら・肉に足・脳届け
黒猫も 骨も踊るよ ネクロ街
「もう十分だもん!次はルナ方面に行こうかな」
最後の一句を詠み終わったモンちゃんは、自信満々にドヤ顔をキメる。…が、彼がいかにドヤっていても、その小さなモンスターの顔面から表情を読み取れる者はいない。
ともあれ、川柳作りもひと段落。
満足したモンちゃんは、冒険者と別れ、旅を再開すべく宿へと戻るのだった。
宿の名前は、「すすり泣くバンシー亭」。
その名の通り、夜になると微かにすすり泣きの声が聞こえてくるという、実にアンブラらしい宿だ。街の中心部、銀行の隣という便利な立地でもある。
建物は漆黒の石材を積み上げた“シャドースタイル”と呼ばれる建築様式で、玄関の支柱にはおしゃれなドクロがあしらわれている。
「ポイント高いもん。センスあるもん」と、モンちゃんも納得のデザイン。
街全体もこのスタイルで統一されており、どうやら景観条例的なものがあるらしい。そして、驚いたのが、この街をロマンス王子が統治してるということだ。
ようやくそこに気づいたモンちゃんは、軽く震えた。危うく再捕獲コースである。
バンシー亭の入り口に扉はない。誰でもふらっと立ち寄れる作りになっていて、店内は常にほんのりと香のような死の匂いが漂っている。モンちゃんはカウンターへと向かった。
「お姉さん、荷物を回収したらチェックアウトするもん!」
「あら、お帰りなさいモンちゃん。傑作はできたかしら?」
「アンブラの・宿は最高・バンシー亭!」
「……」
一瞬、時間が止まった。
スタッフのお姉さんは目をぱちくりさせた後、乾いた笑みで返す。
「……傑作ね。それ、紙に書いてトイレに飾ってもいいかしら?」
「もちろんだもん!どーんと飾ってほしいもん!」
モンちゃんの語尾には一切の遠慮がない。
“トイレ”という単語に一瞬引っかかったが、気にしないことにした。
部屋に戻ると、モンちゃんは、てきぱきと荷造りを開始。
川柳を書き連ねた和紙を丁寧にまとめ、道具一式とともにバックパックに収める。最後にマジカル万能ハサミを放り込み、準備完了。
「お客様、チェックアウトでございます。またのお越しをお待ちしております」
扉の前で、スタッフのお姉さんが頭を下げた。ドクロのイヤリングが、カラリと音を立てる。
ルナを目指すべく西口に向かって歩き出すと……
「あれ、モンちゃんじゃない!」
どこかで聞いたような声に、モンちゃんは、ぱっと振り返る。
そこに立っていたのは見知った顔。助けてくれた恩人。
「あっ! ミリョクさんだ!」
笑顔…?、とおぼしき顔で駆け寄るモンちゃん。が、やはり表情の変化は分かりづらい。
「こんなところで何してるの?」
「バンシー亭に泊まってたもん。いまチェックアウトしたところだもん!」
「モンちゃんが宿泊……? プッ……」
ツボった。モンスターが宿泊。
ミリョクは肩を震わせたが、なんとか笑いをこらえて呼吸を整える。
「わたしはね、調査報告が終わったから、これからルナに行こうと思って」
「同じ目的地だもん!僕も一緒に行っていいかな?」
その瞳が、ぴかぴかと輝く。
「もちろんよ」
こうして、モンちゃんとミリョクの二人旅が始まった。アンブラの街を出て、西の街道をルナへと進む。
ーーーーー
昼下がりの陽射しは強く、青空の下、二人の影は街道にくっきりと伸びていた。春とは思えぬ暑さに、モンちゃんの翼も少しくたびれ気味だ。
沈黙を保っていた二人だったが、街外れに差し掛かったころ、モンちゃんがぽつりと呟いた。
「ミリョクさん、あのあと、どうなったの?」
それは、ロマンス王子に捕まった事件の顛末。そして、句にしたくて仕方ない出来事でもあった。
「ふふ、気になるわよね。実は……モンちゃんにもらった“マジカル万能ハサミ”が大活躍したのよ」
「へ? ハサミがどうしたもん?」
ミリョクは、あのラビリンスの地下で起きた異変の真相を語り出した。ロマンス王子が放ったモンスター。黒いローブの男の囁き。そして、その裏で操られていた構図。
モンちゃんは目を見開き、口をポカンと開けたままだった。
「黒ずくめの男……なんだか不穏な匂いがするもん。でも、王子はおとがめなし?」
「街の参事会は王子には手を出せないの。せめて街の出入りだけは禁止になったけど…」
「ミリョクさん、王子ってことはアンブラには王様もいるの?」
「一応いる。けど詳細は大人の事情で伏せられているのよ……」
なんとも歯切れの悪い回答であった。
どうやらアンブラには奇妙な政治体系があるらしい。王子も王も存在するが、王は名を伏され、統治者の影は濃く、そして薄い。
「じゃあ……ロマンスって、源氏名の可能性もあるもん?」
噂では、正式な名前が知られると呪術による攻撃を受ける可能性があり伏せている。となる
とロマンスという名も源氏名である可能性もある。
「それ、意外と鋭いわよモンちゃん」
「なんだろう・陰謀のにおいが・プンプンだ! 川柳ができたもん!」
「そう、マラスは昔から陰謀が渦巻いて…って、 川柳?」
「僕は川柳を極める旅をしているもん!」
そんな軽妙な掛け合いが続く中、モンちゃんはふと、旅の始まりを語り出す。天使にイタズラされ、人語を得て、漂流者を助け、お礼に川柳の道へ導かれた奇妙な運命。
「すごく……面白い生き様ね。いや、モン生って言うべき?」
「うふふ、自慢のモン生だもん!」
和やかな空気が広がった、そのときだった。前方から冒険者と思われる人の姿が見えたかと思うと急速に近づいてきた。
「ミリョク様じゃないですかっ! 大変です!」
砂埃を巻き上げて駆け寄ってきたのは、革の鎧をつけたヒトの女性。だがその正体は、Doomの民にして、かつて禍々しき魔物 ラビージャー。
「スフィンクス様が、危篤なのです!」
それを聞いたミリョクの顔が、すっと緊張に染まる。モンちゃんもすぐに飛び上がった。
「……! わかった、急ぎましょう。ラビージャー、お爺様に伝えて。あと、ぼったくりヒーラーのエステバンも呼んで」
「了解です。一応、リチャードが現地でスフィンクス様を応急処置中です」
「じゃあ僕たちも行くもん!」
「ええ、急ぎましょう」
急転直下の展開に、二人は進路を変えた。行き先はピラミッド。アンブラ南西、湖の近くにそびえる謎多き場所。
道中、ミリョクはモンちゃんに語る。ピラミッドの地下に眠るとされる幻のダンジョン、スフィンクスの過去、Doomとの奇妙な縁。
ただ、本人が過去のことは一切話さないので、ダンジョンだったことは都市伝説の類とされている。
「スフィンクスさんが、過去を語らない理由が知りたいもん!」
「私もよ。でもお爺様も教えてくれないのよね……」
ミリョクはモンちゃんに説明を続ける。
Doomとピラミッドが、いつから交流があるのかは謎だが、今でも定期的な行き来がある。スフィンクスは予言、先読みの力と占星術にも長けており、Doomもその恩恵を受けている。
ミリョクの名も、スフィンクスのアドバイスが影響しているそうで、ある意味名づけの親と言ってもよい。
「ミリョクさんの名付け親みたいなもんだね。絶対に助けないと!」
「そうなの。少し急ぎましょう」
名づけ親のような存在である彼を、絶対に救いたい。その想いが二人を加速させる。やがて、揺れる陽炎の向こうに、巨大なシルエットが見えた。
砂丘に半ば埋もれながらも、存在感を放つピラミッドが、二人を迎えようとしていた。
ーーーーー
「モンちゃん、こっちよ」
ミリョクに手を引かれ、モンちゃんはピラミッドの崩れた壁の脇にある、まるで人目を避けるような狭い隙間へと潜り込んだ。暗がりを想像していたが、通路の中は意外にもほのかに光が差している。
そして、視界の先——そこにはスフィンクスらしき者が横たわり、その傍らでなにやら怪しげな魔法を唱えるアンデッドが一人。
「ミリョクさん! スフィンクスさんが、リッチーに襲われてるもん! いますぐ助けないと!」
叫んだモンちゃんを、ミリョクが小さくため息をつきながら止めた。
「違うの。彼はリチャード。ラビージャーが言ってた、エステバン並みの実力を持つ、Doomの民よ」
「え、でも……、どっからどう見ても攻撃してるようにしか見えないんだけど……?」
「我々は、スフィンクスの前では偽りの姿を取らないの。つまり、あれが本来の彼なのよ」
説明されても納得しきれないモンちゃんだったが、確かにリチャードは攻撃というより、必死にスフィンクスへ魔力を注いでいるようだった。
「でもさ……、アンデッドなのに治癒魔法って、おかしいいもん」
「彼は生前、錬金術と聖職の両方を極めた伝説級の賢者。呪術も神聖魔法も治癒魔法も全部網羅してるのよ。アンデッドになっても使えるの。不思議だけどね」
そんなスゴイ人(?)なのか、とモンちゃんは納得……したふりをして、にんまりと笑った。
「ここで一句! パッと見は・リッチーだけど・伝説の賢者!」
しーん。……その場の空気が凍りついた。
リチャードの詠唱は止まらないが、ミリョクの表情だけがカチコチに凍結している。しかし、めげない。それがモンちゃんの流儀だ。
「こんな時に・ごめんなさいね・モンは反省……!」
再び詠み上げ、満足そうにうなずくモンちゃんに、ミリョクが遠い目で呟いた。
「まったくもう……」
そのタイミングで、ようやくリチャードがこちらに気づいたらしい。顔を上げ、わざとらしく驚いたように声をあげた。
「おや、この妙な句に精神を侵される感覚……まさかミリョク様!? よくぞ来てくださいました! 大変なのです、このままではスフィンクス様が……!」
「句の影響じゃないもん!?」
モンちゃんがショックを受けるのも構わず、リチャードは再び治療に集中。輝く術式の輪がいくつも重なり、バフ魔法が立て続けにかけられていく。
「いまラビージャーが、エステバンを呼びに行ってるわ」
「ですが……奴でも恐らく無理かと。これは“呪術”です。神聖でも回復でもない、忌まわしき術の痕跡……!」
リチャードの言葉に、ミリョクの表情が険しくなった。
「じゃあ、解除には………」
「術者を探すしかありません。倒すか、解かせるしか……」
「心当たりはある?」
しばしの沈黙。リチャードの頭の中で何かが繋がったようだった。
「そう言えば……スフィンクス様は最近、“森の賢者亭”という屋台に頻繁に通っておられました。あそこは、我々Doomの民ですら一目置く、不思議な場所なのです」
「森の……賢者亭?」
ミリョクの声に、モンちゃんが首をかしげる。
そこは、オークが雇われ店主をやっている屋台。偉大なる創造主が、種族の垣根を超えて交流できる場として作ったとされている。
そこから発せられる陽の気が、世界に調和をもたらすらしいとリチャードは言う。
「そして、いまその屋台はダンジョンの深層部にあります」
「深層部って、どのくらい?」
「冒険者の助力がなければ辿り着くのは困難でしょう。お二人の力では……申し訳ありませんが」
リチャードはそう言うが、かといって彼はスフィンクスを治療しないといけないため離れることが難しい。
となると?
ミリョクとモンちゃんが顔を見合わせる。
「モンちゃん、私たちで行くしかないみたいね」
「だよね! 行くもん!」
そう言ってピラミッドを出たその時、ミリョクがふと立ち止まり、モンちゃんを呼び止めた。
「お願い。モンちゃんは、ブリテインで冒険者を集めてきて。私は、ひとりでどこまで行けるか試したいの」
「でも、それって……」
思わず止めかけたモンちゃんだったが、ミリョクのまっすぐな瞳を見て、言葉を呑んだ。彼女の目には、強い決意と、かつてなかった自信が宿っていた。
「わかったもん。気をつけてね」
「ええ、任せて」
モンちゃんはぎゅっと拳を握ると、広報官室を目指して駆け出した。その背中を見送りながら、ミリョクはそっと呟いた。
「あのときとは、もう違うから」
深層へ向けて、少女はひとり、歩を進めた。
※イベント終了後、当日のシナリオを掲載します。
この記事は、イベントを企画している「イベントモデレーター」のブログのページを引用しています。
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