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Yamato

サリシアとドラゴンの宝石 前編

引用元:別ウィンドウで開く https://uoemyamato.hatenablog.com/entry/2026/03/24/031442
2026.03.24

王室広報官のリシオです。

今回はサリシア様からの依頼となります。

 (サリシア様)

サキさんとナーマさんがセドラに捕らえられたということで

救出のお手伝いをお願いしたいとのことです。

 

 (サキ) (ナーマ)


サリシア様は二年前、公爵家の長男リック様から婚約破棄を告げられ

社交界から距離を置かれていた方です。

そんなサリシア様の元に、とある伯爵令嬢から誕生祝賀会の招待状が届きます。


サリシア様の子爵家では、祝賀会に持参する豪華なプレゼントを用意できません。

そこで、ナーマさんに占ってもらったところ、ドラゴンエッグの宝石というものが

水晶玉に現れたそうです。

 

 

それをサリシア様、サキちゃん、ナーマさんで取りに行ったところ

二名が捕まってしまうという大惨事になったそうです。

 

ガードの先鋭部隊が、調査へ向かったのですが誰も戻っていません。

そこで今回、冒険者の皆さまを募集することになりました。

 

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◆開催日時:3月25日(水)22:00~  
◆集合場所:Britain広場

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注意事項:
◆ 予期せぬ出来事が発生するかも知れません!貴重品はなるべく持ち込まないよう、お願いします。
◆ 以下に該当の場合、あるいはEMが問題ありと判断した場合はコールのうえ、イベント中止の措置を取らせていただく場合があります。
 - イベント進行の妨害、かく乱行為。
 - EM、あるいはほかのプレーヤーに対する侮辱的発言、またはそれに準ずる行為。
◆ 皆さんのイベントです。マナーを守って楽しく参加しましょう!

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ここはブリテイン王立広報室
王都でも数少ない「仕事をしている体裁」だけは完璧な部署である。


「室長、前から思っていたんですけど、ここ、タウンクライヤーと業務が被ってませんか?」


「急にどうしたにゃ?そのおかげで、今日も平和だにゃ」


室長のネコマタコは、愛用のカップでキノコ茶を一口すすり
「にゃ~」と、実に気の抜けたあくびをかました。


(全然答えになってない……)


リシオは内心で深く溜息をつく。


「最近、行政改革で組織のスリム化が進んでますけど、ここは大丈夫なんですか?」


「あ」


ぴたりと固まる室長。
その一瞬の沈黙が、すべてを物語っていた。


(終わったかもしれない……この部署)


リシオの不安が、一気に膨れ上がる。


「だ•••、大丈夫にゃ?」


「なぜ疑問系なんですか」

 


「うーん……」


室長は腕を組み、珍しく真剣な顔で考え込む。


ややあって
何かを思い出したように、ゆっくりと口を開いた。


「広報室は歴史のある部署だにゃ」


どこか誇らしげに、彼女は言い切った。


広報室とは、王室および行政機関が
国民と双方向のコミュニケーションを通じて信頼関係を築くための拠点だ。


近年、情報の「発信」こそ効率的なタウンクライヤーに譲ったが
そのぶん広報室は「国民の相談窓口」としての色を強めていた。


内容に応じて冒険者に協力を要請し、問題を解決へ導く。
利用者は市民から貴族まで幅広く信頼もある。


「歴史があっても、油断はできませんよ」


「大丈夫にゃ。冒険者からの支持もある」


冒険者にとって広報室の依頼は
ランクアップに有利な「奉仕活動」としてカウントされる。


さらに、希少アイテム(リワード)を持つモンスターに
遭遇しやすいという噂もあり、常に受注希望者が絶えないのだ。


もちろん、純粋な奉仕精神で動く者も多い。


「なるほど。世の中に事件がある限り、うちは安泰だと?」


「そういうことにゃ。幸いといったら語弊があるかもだけど、この世界は事件に困らないからにゃ。それと」


室長は広報室の特別な強みを口にした。


森の賢者亭という名の屋台。


偉大なる創造主が生み出した、種族・身分・次元を越えた交流の場。
室長はそこに出入りしている。


王国もまた、世界の動向を把握するための
貴重な情報源としてその繋がりを重視していた。

 

「だから、簡単に潰れることはないにゃ。でも油断は禁物。
小さい依頼の積み重ねが大事だにゃ。最近の報告はどうにゃ?」


「はい。先日のメネイエルさんの依頼ですが、無事に宴会を乗り越えたようです」


冒険者のMikeさん、Milmilさん、Miraiさんの協力で
ちょっとした芸から大喜利、最後は魔法で全員を眠らせて終わったそうだ。


ただ、魔法の加減を間違えたため
ゼントの全住民が眠りにつき、後日奉行所の綾瀬様に怒られたらしい。


「それとお宿みやびに加え、森の賢者亭でも給仕をすることになったそうです」


「あの女神様、さっそくやらかしたのにゃ。屋台でいろいろ学ぶといいにゃ」


「それにしても、あの屋台は上位種が集まりやすいですね。
騎士団の関係者らしき人物も出入りしているとか」


常にフードで顔を隠した謎の人物。
その声から、室長は密かに「デュプレ卿ではないか」と睨んでいた。


「リシオも今度連れていってあげるにゃん」


「そんな恐れ多いところ、遠慮しておきます」


その直後、バンッ!! と勢いよく扉が開かれた。


現れたのは、貴族のお嬢様風の女性。

 


「ザッカ―ハーグ子爵家のサリシアですわ!依頼があって参りましたの!」


桃色のロングヘアに豪華な髪飾り。
貴族らしからぬ立ち振る舞いに、リシオは思わず後ずさる。


(また個性的なのが来た…、今度はお貴族様か。サリシア、どこかで聞いた名だな……?)


リシオは記憶の糸を辿る。


二年前。


公爵家の長男リックとサリシアは婚約していた。


しかし、公爵家に入り込んだメイド
(その正体は悪魔イザベラ)の陰謀により
婚約破棄と追放の憂き目に遭った。


冒険者の活躍で悪魔は退治されたが
当主までもが悪魔に入れ替わっていたという
前代未聞の不祥事として記録されている。


公爵家はリックが家督を継いだが没落していると聞く。


「サリシア様、お久しぶりでございます」


「覚えていてくださったのですね。嬉しいですわ」


優雅にスカートをつまみ、礼をするサリシア。
リシオは彼女を応接ブースへと促した。


「サリシア様、本日はどのようなご依頼で?」


「とある伯爵家のご子息様の誕生祝賀会に招待されましたの」


「それはおめでとうございます。名誉回復の兆しですね」


社交界において、婚約破棄された令嬢は距離を置かれる。
招待されるというのは、名誉回復の兆しだ。


しかし、サリシアの表情はどことなく曇っている。


「サキさんとナーマさんを助けて欲しいのですわ!それと、お祝いの品も……」


先ほどまでの勢いはどこへやら
彼女は視線を落とし、ぽつり、ぽつりと事情を語り始めた。


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リックは、二年前の悪夢を今でもこう思っている。


「我が家が没落したのは、すべてサリシアのせいだ」と。


たとえ斜陽の身とはいえ、公爵の名冠は伊達ではない。


その権威を笠に着たリックの嫌がらせは、執拗かつ陰湿だった。


サリシアの実家である子爵家への圧力は日増しに強まり、
領地運営は滞り、家計は火の車。
かつての華やかさは、今や見る影もなかった。


そんな折。

サリシアの元に、一通の招待状が届く。
ある伯爵令嬢の誕生祝賀会への誘いだった。


(社交界から爪弾きにされている我が家に、なぜ……?)


違和感は明白だった。
主催者の裏にある意図、あるいはリックの影。


「さて……どうしたものかしらね」


サリシアは腕を組み、考えに耽る。……が、
もともと深読みを美徳としない彼女の思考はわずか数秒で極点に達した。


「どんとこいですわ!」


結論は、いつもの超ポジティブ。
悩むだけ時間の無駄である。


社交界とは、見栄と虚飾が支配する戦場だ。


困窮したサリシアの家が
満足な献上品を用意できないことは周知の事実。


おそらく祝賀会の席で、彼女が持参した「見劣りする品」を衆目に晒し
嘲笑の的にするつもりなのだろう。


サリシアは、その夜の“残酷な余興”としてキャスティングされたのだ。
しかも主賓はリックの友人……となれば、筋書きは透けて見える。


「ここで悩んでも仕方ありませんわ。
あのパン屋の娘のところで、スイーツでも食べながら考えるとしましょう」


幸か不幸か、彼女の耳には『グッドイーツ』の新作の噂が届いていた。
このタイミングで届いた招待状は、
もはや「スイーツを食べて解決策を練れ」という天啓に違いない。


サリシアは即座に行動を開始した。


屋敷の近くから「乗り合いラマ」に飛び乗り
王都ブリテインへと向かう。


貴族の令嬢としてはあまりに慎ましい
だが今の彼女には最も合理的な移動手段だ。


乗り合いラマとはテイマーの収入源のひとつで
数頭の乗りラマを使って人や荷物を運んでいる。


運賃もリーズナブル。
移動魔法が使えない者にとっては有難い存在である。

 

「銀行前に到着だよ」

 

御者が客たちに声をかける。

 

久々に訪れたブリテインは
押し寄せる人の波と熱気に包まれていた。


第一銀行付近の堀沿いには行商人の露店がひしめき
威勢のいい呼び声が響く。


銀行近くに設置された「公共の炉」からは火花が散り
流しの鍛冶師たちが武具の修理に汗を流している。


冒険者がパーティーメンバーを募る姿もある。
地方の静寂とは対照的な、混沌とした活気がそこにはあった。


サリシアはラマから軽やかに降り立ち、周囲を見渡した。


「相変わらず、人が多いですわね。あの娘の店は確か……あら?」


ふと、銀行近くの掲示板に目が止まった。


数多の張り紙の中でも異彩を放つ、
あまりに奇抜なデザインのチラシ。


《ハートウッドの母 ???の一番弟子が、あなたの人生を強力にサポート!》


背景には不気味なブラッドワームのイラスト


「この不気味さ、逆に尖っていて素敵ですわ! 占ってもらおうかしら」


場所を確認し、サリシアは目を見開いた。


「これは、あの娘のパン屋ですわね」


グッドイーツの店内と記載されていた。
まさに目的地である。


「さすがわたくし。スイーツのついでに占いまで引き寄せるなんて、幸運の塊ですわ!」


自己肯定感の権化たる彼女は
意気揚々と店へ向かった。


店先には開店前だというのに行列ができていたが、
サリシアは迷わず正面突破で店内へ。


「まだ開店前なの~って、サリシア様なの!」


「パン屋の娘!お久しぶりですわ。サリシアが来てさしあげましたわ」


「よく来てくれたの! ちょうど新作を試食して欲しかったの」


サキが手提げ籠から取り出したのは
黄金色に輝く『ブリタニアンチーズケーキ』


「どれどれ……」


一口運べば、しっとりとした
湯煎焼きの生地が舌の上で頼りなく解け
濃厚なチーズの香りが鼻を抜ける。


「このコク、最高級のユーチーズを使っていて?」


「正解なの! さすがサリシア様、味のわかる女なの!」


満足げに頷いたサリシアは、本題を切り出した。


「それなら、ナーマちゃんなの!」

 


サキは店の隅っこで静かに座る、桃金髪の少女を指さす。


準備中のようで、占いに使う水晶を磨いているが
サリシアは気にせず声をかけた。


「あなたがナーマさんでして?」


「なま~」


気の抜けるような、ゆる~い返事。
ナーマはちらりとサリシアを一瞥しただけで、また水晶磨きに戻る。


「わたくし、誕生祝賀会に持参する『素敵で安価』なプレゼントを知りたいのですわ」


「……1回1000gpなま。大丈夫?」


「問題ありませんわ!」


ナーマが水晶に手をかざし、微かな声で呪文を唱える。


「流れを確認するなま~」


やがて、水晶の中にぼんやりとした輪郭が浮かび上がった。


それは雲上の世界をゆったりと漂う、一筋の光の玉だった。
あまりにものんびりとした、静かな動き。


「なま……っ?!」


ナーマの顔が引きつった。
これはどう見ても「あの世」の光景だ。


つまり、サリシアの命が尽きるということ? 
そんな残酷なこと、口が裂けても伝えられない。


震える手でタロットを引けば、現れたのは無情な『死神』。


(これはアカンやつや)


だが、絶望するナーマを余所に、サリシアが身を乗り出した。


「あら、不気味なカードですわね。
水晶に映っているの、わたくしではありませんこと?」


「な、なまぁ……(言えない、死ぬなんて言えないなま)」


「なんて素敵な世界を漂っているのかしら! 
これはきっと、輝かしい未来の前兆ですわね!」


超ポジティブな解釈を繰り出すサリシア。
その屈託のない笑顔に、ナーマは師であるハテナの教えを思い出した。


『占いは人を勇気づけるもの。落胆させてはダメ』


ナーマは必死に言葉を絞り出す。


「そ、その通りなま~! これから良いことしか起こらないなま!」


強引に調子を合わせ、過去の“それっぽい成功例”を並べ立てて場を盛り上げる。


水晶の予兆は前代未聞だが、
タロットについては、同様のケースは意外とある。


結局のところ、ネガティブな感情に支配されなければ
運命はどうにでも書き換えられる。


それこそが、師から授かった世界の真理だ。


仕切り直しに、ナーマはサリシアにぴったりの
ラッキーアイテムを占うことにした。


水晶に「ドラゴンエッグの宝石」という文字が走り
卵を象った美しい宝飾品の像が浮かび上がる。


「とても綺麗な宝石ですわね」


近くでスイーツを並べていたサキが
『宝石』という言葉に惹かれ身を乗り出した。


「本当なの!これはサキも欲しいの」


「なま~。でもこれ、ダンジョンの最深部にあるみたいだね」


「なんて素敵なお品ですこと」


サキの目が鋭く光り、真剣な眼差しで水晶を凝視する。
やがて確信を得たように、彼女は弾んだ声で告げた。


「場所が分かったの!三人で行くの」


「なま~?」


「わたくしもですの?」


「修行の成果を確認するのに最適!サキも行ったことあるから大丈夫なの!」


だが、水晶の隅にはドラゴンらしき巨大な影がうごめいている。


素人が足を踏み入れるには
あまりに過酷な場所であることは間違いなかった。

 

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二日後の早朝

集合場所の『グッドイーツ』に到着したサリシアは、かつてない不安に襲われていた。


(……メンバーに、問題がありすぎませんこと?)


パン屋の娘、サキ。
子爵令嬢の自分、サリシア。
そして、ブラッドワームの娘、ナーマ。

 

「ナーマさん、あなた……ブラッドワームでしたのね」

 


先日見かけたチラシの背景が、なぜおどろおどろしい魔物だったのか。
サリシアはようやく腑に落ちた。


だが不思議なことに、目の前のナーマからは生臭さなど一切なく
フローラルな良い香りが漂っている。


(希少種ですわ……。お友達になれば、わたくしの運も上昇トレンドになるのかしら)


不安をよそに、サリシアの好奇心は密かに高まっていた。


「今日行くダンジョンは、ちょっと特殊なの!」


サキが意気揚々と宣言する。


「パン屋の紹介する場所に、まともなところがあった試しがありませんわ」


「なま~」


サキがバックパックから取り出したのは

鈍い光沢を放つ小さな金属製のチェストだった。

 

どこか禍々しい冷気を纏っている。

 


「これをDoomの船頭に渡すと、いつもとは違う場所に通してくれるの」


「パン屋はどこからそんな情報を仕入れてくるのですの?」


「企業秘密なの!でも、これはミリョクちゃんに教えてもらったの」


「ミリョク?」


聞き慣れない名に首を傾げるサリシア。


ミリョクとは、Doomを統治する『ダークファーザー』一族の姫君であり
例の屋台でサキたちが顔見知りになった相手だ。


「なるほど、Doomの権力者でしたのね。わたくしと同じ貴族ということですわね」


さらりと自身の身分を並べるサリシア。


彼女は没落の危機にありながら、
この一年間、サキから「稼ぐ術」を叩き込まれてきた。


家のピンチを救うべく耐え抜いた。


「サリシア様、サキちゃんに教えてもらってたなま?」


「そうですの」


トレジャーハンティングにIDOC(腐り待ち)ハンター……。


その過酷な修行のおかげで
今やサリシアは「ステハイ」や実戦スキルも習得しているのだ。


「作戦はこうなの! サリシア様とサキはステルスで移動。
ナーマちゃんはモンスターに行き先を聞くの!」


「なま~」


無茶苦茶な作戦を胸に
三人は呪われた地、Doomへと足を踏み入れた。


サキがミリョクと交友関係にあることは、Doomでも知られており、
モンスターたちは三人を避けるように道を開けた。


おかげで、あっという間に船頭の待つ浜辺へ到着する。
サキが慣れた手つきで鐘を鳴らした。


「チロスのおっちゃん、サキなの!」

 


薄い煙とともに現れたのは、血を吸ったような深紅のローブを纏い、
巨大な剣を右手に持つ男だった。


露出した肌はどす黒く、人型ではあるが、明らかに魔の眷属だ。


「嬢ちゃん、久しぶりだな。……今回は連れが居るようだが」


「そうなの! サリシア様とナーマちゃん」


「サリシアですわ」


「なま~」


「俺はチロス。地獄の番人とは、俺のことだ」


薄暗いダンジョンに、低く、重々しい声が響いた。

さらりと、しかし確固たる自信とともに二つ名を語るチロス。


尖った自己紹介に、サキは頬をぴくりと引きつらせ、一歩後ずさった。


(このオッサン、いつ聞いても恥ずかしいの……)


サキの困惑とは対照的に
サリシアの瞳は宝石のようにキラキラと輝き始めた。


「地獄の番人……! なんて、なんて芳醇で素敵な響きかしら!」


超ポジティブな彼女にとって、二つ名とは強者の証。
その突飛な肩書きすら、彼女の耳には最高の賛辞として届いていた。


地獄の番人チロスは二人を一瞥すると、呆れたように鼻を鳴らした。


「おいおい……ただのお嬢様とブラッドワームに見えるが?」


「サキが特訓したから大丈夫なの! ほら、今日の行き先!」


サキが例のチェストを差し出すと、チロスの表情がにわかに強張った。


「ったく、ミリョク様もとんでもねえ嬢ちゃんを紹介してくれたもんだぜ。……お前さんたち、ここでのことは内密に頼むぜ?」


「心得ておりますわ」


「なま~」


「いいから早くサキ達を送るの!」


かつてDoomは、希少なリワードを求める
冒険者で溢れかえっていた。


彼らが倒れるたびに
その装備や生命力はダンジョンの糧として還元されていたのだ。


だが今や、訪れる者は激減。


チロスのように、特定の相手に便宜を図って「特別な場所」へ送ることで
密かに利益を得る、ブローカーまがい行為をしている者は少なくない。


「それじゃゲートを出すぜ」


チロスが呪文を唱えると、空間が歪み
不気味な漆黒のゲートが口を開けた。


通常のものとは違い
光をすべて吸い込むような、底知れぬ暗闇。


「……不気味な色ですわね」


「なま~」


「それじゃ、入るの!」


サキが勢いよく飛び込むと
残る二人も警戒しながらその後に続いた。


「最近、変な奴が住み着いてるって話だが……。あの嬢ちゃんなら、問題ないか……」


チロスは誰にともなく独り言をこぼすと
ゲートを閉じ、再び霧の中へと消えていった。

 

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ゲートを抜けた先は、明かりの無い薄暗い空間であった。


湿り気を帯びた風はカビ臭く、肌にまとわりつく。


サリシアが不快そうに眉をひそめる傍らで
ナーマだけが「なま〜」と安堵の息を漏らした。


「ナーマの住処にそっくりで落ち着くなま~」


「……このような場所に住んでいらしたの?」


「昔なま。今はシティーガールなま」


「左様でしたのね……」


サリシアが複雑な表情を浮かべる中、サキがパンと景気よく手を叩いた。


「ここからはステルスで移動するの。気合を入れるの!」


「承知いたしましたわ、パン屋」


サキとサリシアが気配を断ちステルスモード。
ナーマが単独で堂々と先頭を行く。


道中、凶悪なモンスターたちが闇から牙を剥くが
ナーマが「なま、なまなま〜」と何事か語りかけると
彼らは毒気を抜かれたように道を譲った。


「お前、見慣れない顔だな」


「なま~。奥にいるドラゴンのところへ行きたいなま」


「それならあっちだ。冒険者には気をつけろよ」


「なま〜」


ナーマが器用に尻尾を振って挨拶すると
一行は何ら交戦することなく目的地へと到達した。


目の前には、不気味な卵を抱えたドラゴンが鎮座し
鋭い眼光でこちらを射抜いていた。


「なま〜!」


「……何だ、小さき者よ。後ろに人間が二人隠れているようだが?」


ドラゴンの目は、ステルスモードのサキとサリシアを正確に捉えていた。


「パン屋。バレてしまいましたわ」


「上位種には敵わないの……」


「残念なま〜」




三人の様子にドラゴンは呆れたように鼻を鳴らした。


「それで、何の用だ?」


「ドラゴンエッグの宝石を探しに来たの!」


サキの威勢のいい答えに、ドラゴンは視線で「暗がり」を指し示した。


「ならば、あそこの奴に聞いてくれ。最近ここに住み着いた、異界の住人だ」


そこには、気配を完全に消失させたローブ姿の人物が佇んでいた。


パン屋で隠密のプロであるサキですら
指摘されるまで存在に気づけぬほどの存在感の無さ。


「調べものの最中なのだが……、何の用だ?」


不機嫌そうな低い声が、ローブの奥から響く。


「ドラゴンエッグの宝石が欲しいの!」


「……ふん。ならば俺が創り出した『魔獣』と戦え。
勝てば一定の確率でくれてやる。チャレンジするか?」


「するの!」


「望むところですわ!」


「なま〜」


食い気味に答える三人に対し、ローブの人物は冷淡に続けた。


「ただし、負ければ実験台として捕獲させてもらう。命までは取らんがな」


サキが直感的に警戒を強める。
直前までは乗り気であったが、相手の最後のフレーズに違和感を覚えたのだ。


「……なんだか、話がうますぎるの」


すると、それを見透かしたようにドラゴンが助け舟を出した。


「セドラの言うことは本当だ。その宝石は、こいつの研究の副産物だからな」


「あのおっさん、セドラっていうのね」


サキが確認すると、ドラゴンは頷き続きを話す。
セドラが現れたのは二週間前。


卵を温めるドラゴンの前に忽然と現れ
「場所を間借りしたい」と交渉してきたのだという。


魔獣にリワードと呼ばれる稀少なアイテムを持たせれば
どの程度の人たちをおびき出せるか調べたいと言ったそうだ。


「いまだにセドラの研究目的はわからんがな」


「ドラゴンにとって大切な時期に、得体の知らない奴の話を聞いたの?」


サキは素朴な疑問をドラゴンに投げてみた。


「そうなのだ」


本来なら即座に噛み殺すらしいが
セドラの放つ奇妙な術がドラゴンの敵意を霧散させたらしい。


「確かにドラゴンと言葉を交わせるなんて不思議なの!ドラ子という例外もいるけど…」


「私もだ。人と話すなど以前なら考えられん。
セドラがこの世界にはない『ヘンテコな術』を使っているせいだろうよ」


「ヘンテコな技術ってなんのですの?」


「サキも気になるの!」「なま~」


「さあなぁ」 言って、三人とドラゴンはセドラに視線を向ける。


視線の先では、セドラが指一本触れぬまま
古びた本のページを次々とめくらせていた。


即座に反応したのはサキである。


「セドラのおっさんの本、興味あるの!」

 

 

サキが近寄るとセドラは不快そうにフードを跳ね上げた。

露わになったのは、見目麗しいエルフの女性。

 


「……俺はおっさんではない。それに、この本はやらん」


「おっさんじゃなかったの! 声が低いから間違えたの」


「それでどうするんだ、ちびっ子ども。こいつの従魔は強いぞ。お勧めはせん」


ドラゴンの忠告を余所に、サリシアが不敵に微笑んだ。


「わたくしたちも鍛えておりますの。簡単には負けませんわ!」


「そうなの!」


「なま〜!」


三人の前に青白いゲートが口を開く。
彼女たちは自信に満ちた足取りで、その中へと消えていった。


数刻後。

ゲートから這い出すように戻ってきたのは、サリシアただ一人であった。


「あんなの無理ですわ!」

 

「だから忠告したのだ。特別に最寄りも街までゲートを出してやろう」


「た、助かりますわ…」


サリシアは、助けを求めるために広報室へ向かった。

※終了後、イベント当日のセリフを掲載しますので、全体のストーリーをお楽しみいただけます。

 

この記事は、イベントを企画している「イベントモデレーター」のブログのページを引用しています。

引用元のページは 別ウィンドウで開く こちら からご確認いただけます。

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