ゲーム定期メンテナンス
日本シャード
毎日 午前 7:00 [30分程度]
(2026年3月8日 ~ 11月1日)

日本シャード EMブログ更新情報

Yamato

熱波の原因を解決せよ(イベント)

引用元:別ウィンドウで開く https://uoemyamato.hatenablog.com/entry/2026/08/24/050041
2026.08.24

広報官のリシオです。

今回は、タウンクライヤー紙の記者サラさんからの依頼です。

ここ最近、サラさんが住んでいるユーは熱波に見舞われており連日酷暑が続いています。

その熱波の原因がモンスターの可能性がでてきました。

しかし、相手は太陽に重なるような位置で浮遊しています。

上空から引きずり下ろす必要がありますが、それは容易なことではありません。

そこでカギになるのが賢者の石と呼ばれるアイテムです。

まずは、その石を確保し、熱波の原因と思われるモンスターを地上へ下ろす手伝いをお願いします。


********************************************************
◆開催日時:8月25日(火)22:00~  
◆集合場所:Britain広場

※集合場所付近はリコールできないようになりますのでご注意ください。

********************************************************
注意事項:
◆ 予期せぬ出来事が発生するかも知れません!貴重品はなるべく持ち込まないよう、お願いします。
◆ 以下に該当の場合、あるいはEMが問題ありと判断した場合はコールのうえ、イベント中止の措置を取らせていただく場合があります。
 - イベント進行の妨害、かく乱行為。
 - EM、あるいはほかのプレーヤーに対する侮辱的発言、またはそれに準ずる行為。
◆ 皆さんのイベントです。マナーを守って楽しく参加しましょう!

********************************************************


プロローグ

ここは王都ブリテインにある王立広報室。


 真面目に業務内容を監査すると厄介すぎるという上層部の判断により

 王宮の定期査定対象から綺麗さっぱり外されている部署である。


「室長。先月のコン太君の件ですが、お母さんは無事に回復して、再び子育てができるようになったそうです」


 それは一安心にゃと室長が言うと、リシオは続きを話し始める。


「ただ、みやびでしばらく預かった影響か、すっかり人間の食べ物の味を覚えてしまったらしく……毎日の食べ物探しが大変みたいですよ」


「それにゃー」


 室長は苦笑いした。


「そういえば、コン太君はどうしたにゃ?」

 

「彼は立派に巣立ちしたようですね。時折、お母さんの狩りを手伝ったりしているみたいですが」

 

「それは良かったにゃ」


 室長は目を細め、手元のカップに注がれたお茶に口をつける。


「室長、こんな暑い日にお茶なんて飲んで、さらに暑くならないのですか?」

「ふふん。これは『冷茶』だにゃ」


 室長によると、シャンピニョンで夏季限定で販売されているキノコ茶らしく、冷茸(ひやだけ)というこの時期にだけ生える希少な素材をブレンドしているらしい。


 その効能は、喉ごしをすっきりさせるだけでなく、直接体温を下げてくれるという優れものだ。


「そんな特別なお茶があるのですね」

「リシオも飲んでみるにゃ」


 室長が新しいカップに茶を注ぎ、リシオがそれを手に取って口に含む。


「……! これは確かにスキッとしますね。すーっと体温が下がっていくような気がします」


 リシオは即効性のある冷涼感に目を丸くした。


「室長、この感覚は魔法の効果でしょうか?」

「ご名答にゃ」


 室長がドヤ顔でもう一口飲む。リシオもそれに倣い、ふと思った。


(このお茶がもっとあれば、熱波に苦しんでいる人たちの助けにもなりそうだ)


 現在、ブリタニアの特定の地域が熱波の影響を受け、多くの人々がうだるような暑さに苦しんでいる。

 

 幸い、死者が出るような人的被害の報告は今のところ聞いていないが、長引けば体調を崩す者が続出してもおかしくない状況であった。


 リシオが思ったことを口にすると、室長は渋い表情になった。


「大量にあれば、の話だにゃ。このお茶の素材は希少種だし、採取場所も極秘扱いになっているらしいにゃ」


「残念です……。それにしても、あの暑さは尋常ではないですね。水桶を外に数時間放置するだけで、お湯になるレベルだそうですから」

「お風呂に入り放題だにゃ。でも、ただの気象現象じゃない気がするにゃ」


 ブリテインも十分に暑いが、特にユー周辺の暑さは異常だ。高温が乾燥を引き起こし、森林火災まで発生しているほどである。


「何かこう……巨大な『熱源』でもいるような?」


 室長の野生の勘は、嫌になるほどよく当たる。と、そんな不吉な推測をしていた時。広報室の扉がギイィ……とゆっくり開いた。 


 「た、タウンクライヤーの記者!」


 入り口に立つ個性的な衣装の女性を見て、リシオが思わず声を上げる。

 そう、現れたのはポンコツ記者こと、サラであった。


「サラっち! ここは出禁だにゃ!」


 室長は机の上の吹き矢にサッと手を伸ばし、警戒レベルをマックスにする。


「ちょ、待つんだわ! 今日は諜報的裏取材やなくて、真っ当な依頼をしに来たべやぁ!」

 

「……今、自分で諜報だったって認めたにゃ!?」

「あっ」


 見事に自爆してしまったという表情のサラに、室長は容赦なく牙を剥く。


「タチの悪い記者が、ここに何を依頼することがあるにゃ!? 誰かの偵察依頼なら即刻お断りだにゃ! シャーーーッ!」

 

 

「おのれネコマタコ! 今日はユーがでぇら暑ぃ~原因の調査依頼だがや! だで、裏で糸を引いてる犯人がいると思うべやぁ! ガルルーーーッ!」


 猫とトラが本気でいがみ合い、威嚇し合う動物園のような有様を見て、たまらずリシオが席を立った。


「二人とも、ストップです! わかりました、正式なご依頼なのでしたら、とりあえずお話をお聞きしますから!」


 リシオは頭を抱えながら、フンスフンスと鼻息を荒くするサラを二階の応接ブースへと案内した。

 もちろん、いつでもサラを仕留めることができるように、吹き矢を握りしめた室長も同席である。


 二階の応接ブースに移動し、三人がそれぞれ席に着くと、リシオが改めてサラへと真剣な視線を向けた。


「それではサラさん。改めて、詳しいお話を伺います」

「分かっただがや」


 コホン、と一つ咳払いをしてから。サラはユーで遭遇した異常な状況について、静かに説明を始めた。


◇◇◇
 

 ここはユーにあるとある農家。

 その離れの一室に下宿しているのは、タウンクライヤー紙の記者であるサラ・ヘルジングだ。

 

 ヘルジング家といえば、化け物退治を専門とする由緒正しき一族であり、実は彼女はその本家の跡継ぎでもあった。


 幼少期より化け物退治の過酷な修行を強要されて育ったが、物心がつくころから家業に対し違和感を覚え始める。その疑念は成長とともに増大し、十八歳のころに一大決心をして家出を敢行。


 以降はブリテインの酒場『ブルーボア』とパン屋の『グッドイーツ』を掛け持ちして働いていた。


 そんな折、客としてブルーボアを訪れていたタウンクライヤー紙の編集長から仕事の話を聞き、興味を惹かれたのだ。


 最初は街頭に立ち、お馴染みのタウンクライヤー姿で、市民への情報提供を行うことから始めたが、やがて編集長の勧めで紙面版の小さなコーナーを任されることになる。

 
 そこでサラが目をつけ、見事に才能を開花させたのが現在のゴシップネタであった。


「今日も何かネタを探さにゃーといかん。だで、平和なユーにネタは転がっておらん」


 ひとり部屋でつぶやくサラ。

 彼女は生活費を節約するため、家賃の相場が安価なユーに住んでいる。

 さらにこの農家で手伝いをすることによって、格安で部屋を借りているのだ。


「それにしても、今日はでぇら暑いんだわ……」


 ユーは緯度が高いため、本来であれば夏でも高温になることは稀であった。

 しかしここ数日は、十年に一度というレベルの熱波に見舞われ、連日異常な気温上昇が続いている。


 数年前にも同様の現象が起きたが、それは強大なモンスターが原因であり、冒険者たちの活躍によって解決している。

 

「サラちゃん、悪いんだけど井戸の水を汲んできてくれんかな」


 家主のカールが申し訳なさそうに声をかけてくる。


「カールさん、はやいなも。ウチに任せるだぎゃ」


 サラは桶を手に取ると、野外にある井戸へと向かった。


「日差しも、とんでもにゃきついがや……」


 最近は雨も降らず、井戸の水位もかなり下がりつつある。滑車を使って重い井戸水を汲み上げるのにも、普段より時間を要した。


 じりじりと肌を焼くように照りつける太陽を恨めしそうに見上げたサラは、ふと強烈な違和感を覚えた。


「……太陽が、二重に見える?」


 あまりの暑さに疲れて目が霞んでいるのだろう。その時はそう思い、気にしないことにした。

 しかし、次の日も、また次の日も、いつ空を見上げても太陽の輪郭は二重に見え……やがて、その表面に目のような不気味な窪みまではっきりと見え始めたのだ。

 


 ここで、怪物ハンターの血を引くサラの直感が告げた。


 あれはただの太陽なんかじゃにゃ。熱波を引き起こす異形の類だがや、と。


 一通り説明を聞き終えたリシオは、なるほどと言って茶化すことなく真剣な顔で深く頷くと、隣に座る室長へと視線を向けた。


「仮にその目の窪みがある太陽が魔物なのだとすれば、ユー周辺の局地的な熱波の説明もつきますね。室長」


「暑さで適当な幻覚を見て、いい加減なことを言ってる可能性もあるにゃ」


 腕を組んだネコマタコ室長はまだ疑っている。


「ガセを言っとる場合じゃないやろが! ウチは本気やぁ!」


 嘘偽りのない、必死で真剣な表情のサラ。

 その気迫を見て、室長もようやく考えを改めたようだった。


「……分かったにゃ。リシオ、サラっちに同行して、本当にその変な太陽があるか確かめてくるにゃ」


 室長の命を受け、リシオはサラと共に異常気象に見舞われているユーの地へと赴いた。


◇◇◇


「確かに、これは暑い……!」


 リシオは額から滝のように吹き出す汗をハンカチで拭った。

 本来なら比較的冷涼で過ごしやすい地域のはずなのだが、灼熱の砂漠のような暴力的な暑さであった。


「だから言ったがや。異常な暑さになっとると……」


 サラは「それ見たことか」と言わんばかりの、見事なドヤ顔を浮かべて胸を張っている。

 対するリシオは、広報室から持参したバックパックから気温測定用の魔道具を取り出し、さっそく現地調査を始めた。


 そこに表示された数値は41度。

 その異常な数値を目の当たりにしたリシオは、思わずたじろいだ。


「あり得ない……」


 王都ブリテインも熱波の影響を受けてはいるが、それでも34度だ。ユーの温度は完全に自然の域を超えている。


 以前のように、やはり強力な魔物の関与が疑われると判断したリシオは、太陽を直接観察するため、光を遮断する濃度の高い特殊なサングラスを着用して空を見上げた。


「あ、ほんとだ……」


 サラの言っていた通りだった。

 強烈な光を放つ太陽の表面に、巨大な目のような不気味な窪みがはっきりと確認できたのだ。


「ほれみい! ウチの言ったことは正しいだがや!」


 サラは「疑って悪かったと謝れ」とでも言いたげな、非難めいた視線をリシオに向ける。

 しかし、リシオはそのドヤ顔をまったく気にすることなくバックパックからノートを取り出すと、すぐさまその異常な太陽のスケッチを黙々と始めた。


 背後にある本来の太陽は月のように真ん丸だが、その手前に重なるようにして浮いている『何者か』は、ゴツゴツとしたやや歪な形をしており、不気味かつ無秩序にぐるぐると回転を繰り返していた。


「仮にこれが魔物だとして……まったく見たことのない奴ですね。強いて言うなら、巨大な岩石のような感じですが」


「そんなとんでもにゃ魔物、ヘルジング家の文献でも見たことないがや」


 ひと通りスケッチが完了したところで、上空を見上げていたサラが「なんにせよキモいがや」と吐き捨てるように言い、現地の調査は足早に終了となった。


 急ぎ王都へ帰還し、広報室に戻ったリシオたちは、留守番をしていた室長へと調査結果の報告を行った。


◇◇◇


「これは、念のためライキュームの学者に相談した方がよさそうにゃ」

 

「絶対にとんでもない特ダネになる気がするだわ! ぜひウチに同行取材させて欲しいがや!」


 室長は腕を組み、目を細めて黙考する。

 ややあって、サラに向けて厳しい視線を放った。


「……条件があるにゃ。今後、うちの広報室を茂みからこっそり見張るのは止めるにゃ」

 

「そ、それは……」


 サラは真剣に悩む。

 こっそりと裏情報をスッパ抜いて記事にするからこそ、読者の目を惹く面白い記事が作れるのだ。


 許可を得ての公式な取材など、面白味に欠ける。そんな優等生な記事ばかりでは、いずれ誰からも見向きされなくなってしまう。


 しかし、今回の謎の熱波と不気味な太陽の件は、間違いなく多くの市民が関心を持っている大事件だ。この取材を逃すのは、記者として絶対にあり得ない。


 ウンウンと唸って悩むサラ。と、そこに存在を忘れられていたリシオが口を挟んだ。


「室長。今回の件は、すでに多くの市民が関心を持ち、不安に思っています。ですから、広報室の活動をPRするという意味でも、サラさんに同行取材してもらっても良いと思うのです」


 それに、王立の機関が記者の取材する権利を不当に制限することはできませんよ、とリシオは正論を並べた。

 
「確かに、リシオの言うことも正論にゃんだが……」


 納得がいかない様子の室長。

 う~んと唸ったのちに、やれやれと口を開く。


「……分かったにゃ。同行を許可するにゃ。ただ、依頼者に執拗につきまとったり、今後広報室の周辺で『大きな藪蚊』を見つけたときは、有無を言わさず無慈悲に駆除するにゃ!」


「誰が藪蚊だがや!」

 

「サラっちが藪蚊だとは一言も言ってないにゃ」と室長がしれっと言うと、「汚いぞ、ネコマタコ!」とサラが牙を剥いて切り返す。


「シャーーーッ!」

「ガルルーーーッ!」


 王立広報室に、再び獣たちの猛々しい威嚇の咆哮が響き渡る。

 そのひどく野性的なやり取りを見て、リシオは「うん、取材の件は無事に解決したな」と心の中で安堵の息を吐いた。


「よし、話を戻しましょう。まずはライキュームに行って、学者さんの意見を聞くことですね」

 

「そうだにゃ。アンドリューというメイスターに聞いたらいいにゃ」


 室長はサラから視線を外し、手早く紹介状を書き上げるとリシオに手渡した。


 それと今回の依頼は『ユーの熱波の原因調査』として正式に受理された。


◇◇◇


 同日午後。

 ライキューム。

 到着したリシオとサラは、さっそく広大な敷地の中でアンドリューという人物を探すことにした。

 

 行き交う大勢の人々を前に、誰に声をかけたらよいか悩むリシオ。しかし、サラは生粋の記者の勘を働かせ、通りすがりの一番若くて押しに弱そうな人物を瞬時にロックオンして話しかけていた。


「ちょっといいがや? ウチはタウンクライヤー紙の記者、サラだがや」

「だ、だかや……?」


 ライキュームに似つかない奇抜な衣装の人物から、唐突に独特すぎる訛りで話しかけられた少年は完全に目を白黒させていた。


「あー、これはウチのクセのようなものだから、気にしないだがや」


 バンバンと遠慮なく肩を叩くサラに、迷惑そうな顔を隠しきれない少年。

 サラはさらに畳み掛けるように肩を組み、親しげに語りかけた。


「メイスターのアンドリューさんを探してるがや」

「アンドリュー様ですね。サラ様と……失礼ですが、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」


 ここでようやくリシオが一歩前に出て口を開いた。


「僕は王立広報室のリシオです」

「広報室?……分かりました」


 少年は言い残すと、逃げるように足早に奥へと消えていった。


「いつ来ても、ここの本の数には圧倒されるだがや」

「確かに、そうですね」


 ライキュームは、大図書館かつ学術研究機関として知られ、世界中から優秀な学者や研究者、学生が集まっている知の殿堂だ。


 気難しそうな者が多く、誰に声をかけるか悩んでいたリシオであったが、サラが目ざとく少年を見つけて捕まえてくれたおかげで、結果的に助かったと思った。


 ややあって、少年がひとりで戻ってきた。


「アンドリュー様のところまでお連れします。こちらへ」


 少年の案内に従い、リシオ達はライキュームの中庭にあるテレポーターに乗る。

 

 移動したのは地下室のようで、所狭しと膨大な書籍が積み上げられていた。ただ、この部屋に置かれている本は装丁が豪華なものが多く、一目見ただけでも価値のある歴史的な書物だとわかる。


「こちらでお待ちください。……それと、真実の本には絶対に触れないで下さいね」


 さっそく珍しそうな本に手を伸ばそうとしていたサラに向けた、鋭い牽制のコメントだった。


「あ、分かったがや」


 少年が呆れたように部屋を出て行くと入れ代わるようにして、アンドリューと思われる人物が姿を現した。

 

 真っ白な髪と豊かな髭を蓄え、やや色褪せた茶色のローブを身に纏ったその姿は、いかにもメイスターといった風貌である。


「やぁ、待たせたのぉ。広報官殿と記者さんが、ワシに一体なんの用事かな?」


 リシオがユーの異常気象と不気味な太陽について手短に伝えると、アンドリューは「うむ……」と一言発し、深く考え込んだ。


「何か良い解決策はないだがや?」


 ややあって、アンドリューが重々しく口を開く。


「……『賢者の石』かのぉ」

「「えっ!」」


 リシオとサラの声が見事にハモった。驚くのも無理はない。

 

 賢者の石といえば、おとぎ話に出てくる伝説上の代物だと思われているからだ。黄金を作り出したり、不老不死の薬になったり、どんな願いも叶えるとも言われている。


 さらには、神が地上に残したギフトという説もあれば、大量の魂を集めて練り上げたという恐ろしい説もあり、何からできているのかさえ不明とされている、いわく付きのアーティファクトである。


「本当に存在するのですか!?」


 思わずリシオが身を乗り出して尋ねると、アンドリューは「ある」と平然と答えた。


「その石で、どうやって太陽を落とすんだがや?」

 

「あれは使い方次第で、いかようにも応用が利くらしいんじゃ」

 

「……らしい?」


 リシオが引っかかりを覚えて尋ねると、アンドリューはゆっくりと語り出した。

 

 彼によると、実際にその目で石を見たわけではないらしいが、膨大な書物や各地に残る伝承を調べ上げ、実際に行ける場所は自らの足で現地確認まで行ったという。


「確実にあるはずなんじゃが……ワシらでは確認しに行けない場所にあるんじゃ」


 先ほどまでは「ある」と自信に満ちた様子であったが、今の口調はどこか歯切れが悪い。


 それもそのはず。彼が指し示すその場所は、そこは、凶悪な魔物が跋扈し、凶悪なトラップが容赦なく侵入者を排除してくる絶望的な魔窟なのだという。


 アンドリューひとりではどうすることもできず、かといって限られた資金では凄腕の護衛を雇うこともできず、調査はそこで頓挫して三十年近く経過してしまったらしい。


 貴族や豪商などの強力なパトロンがいないと調査と研究が進まないというのは、なんとも世知辛く悲しい話である。


「今回の依頼は、何かの縁かもしれぬの」

 

「アンドリューさん。その場所に案内してもらってもよろしいでしょうか?」


 リシオが尋ねると、「もちろんじゃ」と言ってアンドリューは力強く頷いた。


「今日はもういい時間ですので、しっかりと装備を整えた上で明日出発するとしましょう」


 リシオの提案に頷く二人。そこで何か思い出したかのように、アンドリューが話しだす。


「ならば、ワシは該当する文献を今夜もう一度確認しておくとしよう」

 

「食料と虫よけの準備は、ウチに任せておくだがや!」


 サラは腰に下げている『虫くるな~ズ』を手に持って得意げにアピールするが、それを見たリシオとアンドリューは揃って苦笑いを浮かべた。


 そして翌日。

 リシオ達は『賢者の石』が眠っている可能性のある場所の調査をすべく、ウインド周辺の洞窟を奥へと進んでいた。


 しかし、洞窟の中は本来の生態系とは思えないほどのモンスターの数だった。奥へ行くほど、その凶悪さと難易度は跳ね上がっていく。


「ウインド周辺って、ここまでモンスターが強かったでしたっけ……?」

「これじゃ、誰も街へ行けないだがや!」

「こっちのルートは少し特殊なんじゃ」


 リシオは剣術の心得があるため先頭で立ち回り、サラは魔法攻撃で的確に援護し、後方からアンドリューが回復や支援魔法で二人をサポートする。


 DoomのL2あたりなら、この三人のコンビネーションでも十分に攻略できそうなほどの見事な連携であった。


 しかし、結果的に三人はある場所を境に足を止め、完全に立ち尽くしてしまった。

「……これは、とんでもにゃあモンスの群れだがや」

 

「じゃろう? だからこそ、誰も手出しできず、賢者の石が手付かずで残っているに違いないとワシは思うんじゃ」

 

「確かに……」


 アンドリューの言葉に、リシオは力なく頷く。

 岩の隙間から奥を覗いただけで直感的に理解できる、この先の絶望的な状況。


 高難易度のモンスターがこれほど異常にうじゃうじゃと群れている理由は定かではない。石の魔力に引き付けられたのか、それとも何か別の要因で住処を追われたのか……。
 

 いずれにせよ、今回のメンバーだけでどうにかなるレベルの代物ではなかった。


 ここで、リシオはふと思う。

 いつも報告書を作成しているからわかるのだが……『事件が起きる』→『ダンジョンへ向かう』→『強敵がいて先に進めない』→『広報室へ戻って冒険者に依頼を出す』


 今回も、完全にそのお決まりのパターンの予感がする。


「……完全にマンネリ化しているな」


 思わずメタな本音を呟いたリシオに、サラが怪訝な視線を向ける。


「何がマンネリ化だがや?」

「いえ、こちらのひとりごとですよ」


 リシオは悟ったような遠い目をして、そっと首を横に振った。


(いや、今はメタなことを考えている場合じゃない。目の前のこの状況をどう解決するかだ)


 気を取り直したリシオに、アンドリューが再び口を開く。


「この先を調査するには、どうしても凄腕の冒険者の助けが必要じゃろう。じゃが、しがない学者のワシには、彼らを雇うだけの莫大な資金力がないのじゃ……」


「その点についてはご安心を。実は今回、我々は既に『ユーの熱波の原因調査』という依頼を受けて動いているのです」


 ここでリシオは、王立広報室のシステムと、依頼を引き受ける冒険者たちにもたらされるメリット(報酬や利点など)について手短に説明した。
すると、アンドリューの曇っていた表情が見る見るうちに明るく輝き始めた。


「おお……! 今まで研究室に引きこもってばかりおったから、世間にそのような素晴らしい仕組みがあるとは知らんかったわい」

 

「もっと早く知っとったら、アンドリュー氏の研究も、とんでもにゃあ進んでいたかもしれんだがや」


 広報室では建前上、「公益に適う依頼でなければ引き受けない」とされている。

 しかし実際のところは、室長の裁量(と気分)によって個人的な依頼でもホイホイと引き受けているのが現状であった。


 そのため、幅広い層から多種多様な依頼や意外な裏情報が舞い込んでくる。

 その情報は当然、王室の上層部にも届くため、結果的に『有益な情報収集機関』として黙認されている、というわけだ。


「それで、アンドリューさん。今回は具体的にどのように進めたら良いでしょうか?」

「そうじゃな。昨夜、文献を再度調べてみたんじゃが……」


 アンドリューの解説によると、運よくその『賢者の石』と呼ばれるアーティファクトを入手できたとしても、そのままでは使えないらしい。石の中に膨大な「エネルギー」を充填する必要があるのだという。


 エネルギーを満たした石を持ち、件の『偽の太陽』がよく見える場所で術式を起動し、空から魔物を引きずり下ろすという寸法だ。


「最大の問題は、その空っぽの石に、どうやってエネルギーを充填するかなんじゃが……」

「複雑な手順が必要なんですね?」


「うむ」と深く頷き、アンドリューは話を続ける。


 賢者の石そのものを対象とした文献ではないが、特殊な鉱石に莫大な魔力を込める方法が参考になりそうだという。


 しかしそれには、常識外れの魔力を持つ熟練の魔術師の存在が不可欠であった。


「残念ながら、ワシが知っているような大魔術師は、とうの昔に寿命で土の中じゃしのぉ……」


「魔術師なら、一番身近なところに心当たりがいるだがや」


 サラがポンと手を打ち、ニヤリと笑ってリシオへ視線を向けた。


「ハテナってのがいるやろが、リシオ」

「あぁ……!」


 リシオはハッと顔を上げた。確かに、あの規格外の人物なら適任かもしれない。


「む? その『ハテナ』というのは一体何者なんじゃ?」


 ひとり話に置いてけぼりにされているアンドリューが尋ねてきたため、リシオが彼女の持つデタラメな能力と素性についてかいつまんで説明した。


「そ、そんな常識外れの者が、この世界に存在してよいのか……!?」


 学者の常識を根底から覆され、頭を抱えて震えるアンドリュー。そのリアクションは至極当然のものだと、リシオは心の中で深く同意した。


 しかし、これでエネルギー充填の算段もついた。今回の作戦の全貌がハッキリと決まったのだ。


①冒険者の助けを借りてダンジョンを攻略し、『賢者の石』と思われるものを入手する。

②その後、ハテナの元を訪れて石にエネルギーを充填してもらう。

③最後に太陽がよく見える場所へ行き、石の力で偽の太陽を引き寄せ、もし害をなす魔物であれば討伐する。


「ちょうどいいことに、ハテナは今、ユーの街中で期間限定の出張占いをやってるみたいだわ。最高のタイミングだがや!」とサラが情報通ぶりを発揮する。


「おお……ワシもその規格外の魔力が充填される歴史的瞬間をぜひ見学したかったんじゃが……生憎、今週は重要な学会の発表があって参加できぬのじゃ……」


 膝から崩れ落ちそうなほど残念そうな表情をするアンドリューに対し、リシオが「後日、必ず詳細なレポートをお届けします」と約束すると、彼はようやく安堵の表情を取り戻した。


「それでは、僕たちは作戦の手配のため広報室に戻ります」

「うむ。詳細なレポート、首を長くして待っとるぞ!」


 翌朝。

 広報室の掲示板には、血気盛んな冒険者たちに向けた新たな依頼が高々と発表された。

この記事は、イベントを企画している「イベントモデレーター」のブログのページを引用しています。

引用元のページは 別ウィンドウで開く こちら からご確認いただけます。

一覧に戻る
飛鳥市場がおすすめするスポンサーリンクはこちら
- 月々の料金を180日分まとめて支払うクーポンwww.amazon.co.jp
- 月々の料金を90日分まとめて支払うクーポンwww.amazon.co.jp
- 月々の料金を30日分まとめて支払うクーポンwww.amazon.co.jp
- Amazon.co.jpが発送する商品は通常配送無料!www.amazon.co.jp

Copyright(C) All SiteContents' rights Reserved by 飛鳥市場.